運命共同体

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「もしもしお母さん?杜王町着いたよ。…無理言ってごめんね、ありがとう。じゃあ家見つけたらまた電話する!」


この中途半端な時期にわざわざ住みやすい都会から杜王町に転校、というのもおかしなものかもしれないけどこれには一応ワケがある。


杜王町は私が生まれた町。私は未熟児で生まれて体が弱かったため1年遅れで学校に行っていた。
成長してからは重い病気なんてかかったことはないし、むしろ周りより強く成長した。でも周りの子より1歳年をくっている、というのは正直複雑だわ。



その私が幼児の頃、いとこが何度も見に来たりあやしてくれたらしい。その子のことは覚えていないんだけれどとても優しかった、ということは家族からも聞いていた。


いとこのことが知りたいと思って周りに聞いても話を反らされたり遠いところにいる、としか聞けない。だけど「杜王町にいる」という事を聞いたとき、私はそこに行ってみようと思った。それはちょうど、私が生まれた町でもある。一、二歳の頃に都会に引っ越したのだ。

なんでこんなに強く思ったのかはわからないけど、とにかく行かなくちゃと思った。


お母さんに話したら当然反対されるだろうからお父さんに必死に頼み込んで、コッソリ特別枠で入試を受けに行った私は見事合格した。(自分で言うのもなんだけど、都会ではそこそこ頭のいい高校に受かってたのよ)

それを聞いたお母さんは一瞬青ざめた顔をし、一生分ぐらい怒られた。「杜王町」という言葉を出したときは血相を変えて、今にも掴みかかるんじゃないかと言うぐらい。
だけど中途半端な気持ちじゃないことを伝え、お父さんも一緒に説得してくれたおかげで渋々の了承を得た。その後は急ピッチで準備に一週間かけてうちを出た。



生活面はちゃんとお金を払うから、勉強はしっかりしろとのこと。お父さんが私に甘いのを知っていて味方につけたのは申し訳なく思っているけど、これだけは譲れなかった。


それで今に至る。








「…これ、何年前の地図かしら」


着いたはいいけど、記してある場所と現在地と全然違う。


「岸辺…?こんな大きくて立派な家に住めるはずないし…やっぱりこの地図アテにならないわ。」

ずっと留まって岸辺さんの家を眺めていると、たいそう立派なドアが開いた。まずい、このままじゃ私は不審者だ。

姿を見られる前に小走りでその場を去ると角を曲がり大きな道を探した。




明日から学校なのに、どうしよう。ここで幸いだったのは今日が休日じゃなかったこと。平日なら私の通うことになる"ぶどうヶ丘"高校の生徒も道を通るはずだ、ついでに聞けばいい。


生徒がいるんじゃないかと商店街を探そうと思ったけど、そもそも商店街が見当たらない。

このまま日が暮れたらまずいぞ、と急ぎ足であちこち歩き回っていると前方から生徒が二人歩いてきた。






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