運命共同体

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「おぉ、着いた着いた…。ここがぶどうヶ丘高校よね!」

学校をみつけた途端どっと疲れが出た気がする。

家の近くでガラの悪い男が小さい袋に何かを入れて道路に投げ捨てたのを目撃して、足早に去ろうとしてチラリと横目でみたら思いっきり目が合ってしまったため何か言われる前に走って大通りに出たのだ。

しかしそこからの道がわからず延々と迷っていたら、ここの制服を着る生徒を見つけたのだ。そしてそれについてきた。
億泰君や仗助君が制服を改造しているものだから、みんなそうしてるのかと思ったらそうでもないらしい。
なんというか、初日から悪目立ちしている。

職員室へ向かうと私の担任であるという先生は少し目を丸くして「その髪色は地毛か?」とか「制服は正しく着るものだ」とか喋りはじめた。

ううん、改造ってあんまりするようなものじゃあなかったのかなあ。私のいたところは割と自由で何をしても成績さえよければ何も言われなかった。

説教じみた話を聞き終え、チャイムと共に教員室を出て廊下を歩き自分の教室に入る。
案の定「転校生は女か」とかっていう話でザワザワしている。

「今日からこのクラスの一員の…」
「杉本美蘭です」
「あぁ、杉本さん。皆よろしくしてやってくれ」

まばらに拍手が起きる。クラス全員が興味ありげに私をガン見だ。
転校生と言うものは最初三日くらい変に興味をもたれるモノだよなあと思っていると先生に席を指定された。

「じゃあ杉本は…そこの空いてる席吸われ」
「はーい」


窓際の一番後ろだ。隣は…まだ来てないらしい。ショートホームルームを終えて先生が教室を出るとその後の時間はクラスの女子が集まってきて、お決まりの質問タイムだった。

「美蘭ちゃんって地毛なの?」
「うん、色素が薄いみたい」
「どこの高校から来たの?」
「東京の○×高校からよ」
「えぇーッ、じゃあ頭いいんじゃない!」
「いやいや…」

「おい、授業始まるぞ席につけー」

お、先生が来た。次は数学か…数学あんま得意じゃあないんだよなあ。私の元いた高校は文系で私も文系だからよかったが、それでも理数は極端にできず居眠りしかしてない。

教科書を出してノートを取ろうとすると前の席の子がクルッと振り返ってジッと見つめてきた。

「…」
「…」
「えっと…」
「私、佐藤夏帆。よろしく!」
「あ、うんよろしく!」
「好きなタイプは?」
「はっ?」

何だろうこの子、いきなりそういう質問するとは思ってなくて面くらった。しかもずっと目を合わせてくるからちょっとドギマギする。

「うーん…特には…」
「へえ、じゃあ好きな食べ物は?」
「きつねうどんとかかなあ」
「え、本当!?私も!じゃあさ、近いうちに一緒にご飯食べに行きましょ!いい店知ってるのよ」
「行く行くッ!」

思わぬところで意気投合して手を握り合った。それからもこの学校のことや、どの先生が口うるさいかなど話してくれた。
この夏帆ちゃんという子は親しみやすくていい子かもしれない。

「後ろうるさいぞ!」
「「はーい」」

開始して10分、私語を注意されて夏帆ちゃんが前を向いてしまってからはすることがなく眠くなってしまった。
頬杖をついてウトウトしているとガラッと教室のドアが開いた。

「あぁ…東方か」
「うーす」

仗助君だ!まさか同じクラスになれるとは。康一君たち全員と同じでないのが少し残念だけど仗助君と一緒だっただけありがたい。

「おお!美蘭俺と同じクラスかよ!しかも隣じゃん」
「え、この空席って仗助君のなの?」
「あぁ。偶然ってあるモンだな、よろしくしようぜーっ」
「うんうん!」

「コラ、杉本!授業中だぞ大きい声を出すな」
「え、あ、はいっ」

なんで私だけなんだ。仗助君も話していたのに。…さては仗助君のことが怖いのか?とくに注意しようとしない。だからって私だけ叱らなくてもいいのに。

「…康一君たちはクラス近いの?」
「康一は隣の隣。億泰がさらにその隣。」
「へえ、今度行ってみようかなあ。それにしても来るの遅かったね。」
「あぁ、康一がちょっとヘンなのにひっかかっちまってよォ」
「ふうん…康一君人が好さそうだからねえ」


視線を感じて前を向くと先生がジッと見ていた。また先生に注意されるといやだからそれだけ聞くと前を向いてノートをとる。




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