ナギとその仲間達☆
□† ホワイトソース(BL)
1ページ/4ページ
『…釣れねぇ…』
はぁ…と、ため息とともに空を見上げれば澄み渡る秋空にうろこ雲。
『…チッ。空がうろこ纏ってやがる。そーじゃなく、こっちにうろこ纏ったヤツが欲しいんだよ…』
富嶽の船首から釣り糸を垂らし、当たりを待つこと数時間。
『…やべぇ。晩飯、どーすっかな…』
厨房を任されているナギにとって毎日の献立を考えるのは一苦労。
食料庫を確認し、材料を無駄にしないよう、何品か献立を仕上げたものの…肝心なメインディッシュが決まらない。
ならば、と、久々に釣りを試みた。が、…当たり無し。
『仕方ねぇ。…買い出しに行くか』
重い腰を上げて、片付け始めた時、
『よぉ、ナギ!ここに居たのか!捜したぜぇ!』
背後からの威勢のいい声に振り返れば、そこには西海の鬼こと、長宗我部元親の姿が。
『…あ?…元親か』
『おぅおぅ、何でぇ!シケたツラしてよぉ〜?せっかくのコイツが腐っちまわぁ!』
つかつかとナギに歩み寄り、その足元へ、ドスンッ、と、置かれた黒い大きな塊。
『…カジキじゃねぇか。…こんなデケェの…どうしたんだ?』
『この俺様がヒョイと釣ったってやつよ!』
と、片方の口角を上げてニヤリと笑う元親。
『…すげぇな』
黒光りするその大きな体はキラキラと輝いて、新鮮そのものだ。
『釣りも出来る武将なんざ、そうそう居ねェぜ〜?』
『…フッ。あぁ、…ンな野郎はお前ぐらいだろうな。…新鮮なうちに料理しちまう。…手伝えよ?』
ドヤ顔を決める元親の肩を、通りすがりにポンと叩く。
『おうよ!任せな!』
こうしてーーー
男二人、富嶽の厨房へ向かった。
そう、そこが、これから始まる快楽の花園になるとも知らずに……。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
『…上手いもんだな』
『ハハッ、これぐらいは朝飯前だぜ!』
自分が三枚におろしてやる、と、出刃包丁を上手く操り、どデカいカジキを手際よくさばく元親。
適度にカットされたその身を、ソテーにするため、下味をつけるナギ。
『しかしよぉ、ナギ。お前さんの作る料理はどれも美味いな』
『…何だ、急に…』
『毎日の献立に悩んだりしねぇのか?』
『……フッ。…悩みまくりだな。しかもよく食う奴らばっかだし。量もハンパねぇ…』
『だよな。…で、このカジキ、どう調理すんだ?』
『…ソテーにする』
『ほぉ、そいつぁまた美味そうだ!とびきりの酒も頼んだぜ?』
『…たく、わかってるっつの』
他愛ない話をしながらの調理。
『…ナギ、この味付けでどうよ?』
『……』
元親が味見で差し出したスプーン。
それを舌先でペロリと舐め取る。
『……ッ////』
『…あ?…どした?』
『い、いや、…何でもねェ…////』
『…?…変な野郎だな。…少し塩が足らねェ…』
仕上がり間近の鍋の中、パラパラとひとつまみの塩を入れ、元親が混ぜる。
『…今度はどうよ?』
と、二度目の味見。
『……あぁ、美味い。後は、このまま少し煮込んだら仕上がりだ。…次はサラダだな。…片倉農園で採れたキュウリ、無駄の無ェようにしねぇと、オッサンの黒龍にバッサリ、…だぞ?』
『あぁ、だな。竜の右目の野菜愛は別格だからな』
元親にキュウリを薄く切るように頼んだものの……
『…おい、…厚く切りすぎだっつの。もっと薄くだ』
『…っつてもよぉぉ…豪快に切る分には問題ねぇが…薄くっつーのは…難しいってもんよ』
『…たく、仕方ねぇな…。……ほら、こうやって支えてる左手に包丁を添える感じで…』
元親の背後に回り、後ろから包丁を握る元親の右手に手を添え、切り方を教えるナギ。
『…ッ、ナギッ、お前さんッ///』
『あ?…何慌ててんだよ?危ねェからじっとしてろ。…ほら、こうやりゃあ、簡単に薄切り出来るだろ?』
後ろから元親を抱きしめる格好のまま、器用にキュウリを薄切りするナギ。
『……ェ///』
『……あ?何か言ったか?』
『…やべェ…わ///』
『…?』
ガチャンッッ!!
『…!?』
握っていた包丁をシンクへと落とした元親。
次の瞬間ーーー
『…元親…んンっっ!?』
驚く間もなく、自分の唇に注がれる熱。
目の前には元親の顔。
その時初めて、口付けされている、と、実感したナギ。
『…ッ、お、おいっ、…おまっ、何やって…ッッ///』
慌てて元親を押し返すも、ガタイのデカい男の胸板は厚く、重たい。
『…すまねぇ…。情けねェが、もう…我慢の限界だ…////』
元親の掠れた声が耳元をくすぐる。
『…っ、限界って…ッ///』
ナギを抱き締める逞しい腕。その腕が背中から腰へとゆっくり下りていく。
少しずつ後ずさるナギの身体を追い詰め、カタン、と当たったそこは、広く、大きな食卓。
『…元親ッ、ヤメ…ろ///』
『…しーーッ…。じっとしてろ。騒ぐと聞こえちまうぜ?』
耳朶を甘噛みしながら、首筋を伝う唇。
そっと食卓へ押し倒されたナギ。
そんなナギを愛おしむように見下ろす、怪しい光を放つ青い独眼。
そんな中、元親はカチャカチャ、と音を立てながら纏いを脱いでいく。
刀を振るわれてもその刃を寄せ付けないであろう、金属の纏いの下から現れたのは、均整のとれた筋肉質な身体。
『…元親、お前……』
その身体から目が離せねェ…。
自分でも何故だかわかんねェ…。
『…クッ。…見惚れてんのか?』
『…ッッ///』
意地悪そうな笑みを浮かべたまま、そっと口付けられる。
それを拒むことなく…俺は元親に身を任せた。
✳︎