螢桜姫伝
□第2章
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*雪村千鶴*
「・・・ん・・・?」
・・・朝?
「ええと・・・」
私、どうしたんだっけ・・・。
・・・。
・・・ああ。
「・・・そっか」
朝の光に目が慣れると、昨夜の出来事も一気に思い出された。
・・・ここが私の部屋ならよかったな。
ぐるぐると縛り上げられた私は、芋虫のように寝転がりながらため息を吐く。
「全部、悪い夢なら良かったのに・・・」
昨日の夜、あの人達と会った後気を失った私が連れて来られたこの場所。
それが「新選組」の本拠地だった。
「私、どうなるんだろう・・・」
私がもう一度ため息を吐いた、その時。
ゆっくりとふすまが開いて、人のよさそうなおじさんが顔を出した。
「ああ、目が覚めたかい。」
優しそうなその人は、井上と名乗った。
「すまんなあ、こんな扱いで・・・。
今、縄を緩めるから少し待ってくれ」
「え・・・?」
井上さんは苦笑を浮かべながら、私をぐるぐる巻きにした縄を解いてくれる。
・・・さすがに手を縛っている縄までは解いてくれなかったけど。
「えと、あの、ありがとうございます」
私が頭を下げると、井上さんは少しだけ笑った
「ちょっと来てくれるかい」
「え?」
「今朝から幹部連中で、あんたについて話し合っているんだが・・・。
あんたが何を見たのか、確かめておきたいってことになってね」
「・・・わかりました」
私が頷くと、よろけながらも立ち上がった。
「心配しなくても大丈夫さ。なりは怖いが、気のいい奴らだよ」
「はあ・・・」