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□真っ白な貴女
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サルセレッソの花が舞い散り町がほんのりと桜色に染まる春の日。
街中でいつもと同じ様に小さく花が咲くように微笑んでいた彼女の口から出た言葉があまりにも衝撃的過ぎて私の思考回路は一瞬にしてショートした。

 始まりは数日前になるのだろうか
互いに仕事やらで忙しく久しぶりのデートの日。いつも通り約束よりも少し早い時間に約束の場所へ着くと、すでに彼女はそこへ立っていて、居ても立ってもいられないのか私の方へと走り寄ってきた。
 「アーサーさん、あの、あの……」
話をしたい事が纏まらないのかアワアワとしながら焦る彼女を落ち着かせるべく、彼女を優しく抱きしめ耳元へと囁きを落とす
 「フレイ、落ち着いて下さい…ね?」
少し落ち着いたかと顔を覗き込むと、彼女は顔を真っ赤に染めながら一つ、深呼吸をすると私の服を弱い力でクイ、と引いた
 「あの、お話したい事があって…部屋へ来てくれませんか…?他の人に聞かれるのも…」
深刻な事なのか、多少ではあるが眉間に皺を寄せる彼女を見て二つ返事をした後、彼女の部屋へと誘われた。
 「それで、話と言うのは…?」
部屋の真ん中に鎮座するダイニングセットで温かいお茶を頂き、じわりと温かいカップを手にしながら彼女に問う。こんなに悩ましい彼女を見るのは…いつぶりでしょう。
そわそわと、言いだし辛い事なのか何とも言葉にならない言葉を紡ごうとするのを見、ゆっくりと彼女の言葉を待った。
 「ぁぅ…えっとね、最近女の子皆でパジャマパーティーをしたんですよ。」
身振り手振りをしながら…一つずつ言葉を紡いでいく。
随分と時間をかけて彼女が口にした言葉は私を驚かせるばかりで…冒頭へ戻るのである。
まさか、とかそんな訳は…と考えてはみたものの、よくよく考えてみれば当たり前な話かもしれないが。彼女は…その、子供の作り方を知らない、と言う。
それを知らない事もあり、私とキスをした事で…子供が出来たのかと、不思議と思いパジャマパーティーで女性たちに意見を求めると笑われたり頭を撫でられたり…その場で教えてくれれば良い物を、彼女たちは付き合っているのだから、そう言う事は彼氏に教えてもらうのが一番良い、変な事を教えて怒られたくないから私たちは教えない、等と…
要約すればそんな話であった。
一度記憶が名前以外全て消えてしまったせいなのか、はたまた元々…そう言う物に疎かったのかは私には想像のしようも無い訳だが。とても重い仕事を請け負ってしまった様です
衝撃の話から一息を入れるべく先ほど頂いたお茶を一口、口に含み彼女を見ると恥ずかしさやら知らないことへの興味からなのかは分らないが多少興奮した様子で話しを続ける
 「いや、知らないって言っても多分…記憶とかと一緒に無くなっちゃったんんじゃないかとは思うんですがね、私だってそれなりの…大人だとは思うんですよ。本当の年齢は全く分りませんけど…」
最近の子供は昔に比べ発育が良いとは言え、流石に未成年ではないと思うんですよねぇ、なんて小さな言葉を最後に洩らすとボッと燃えるように紅く熟れたリンゴのように染まった彼女はテーブルに突っ伏して言葉にならない言葉を紡いだ。
 「フレイさん、貴女は…可愛らしい方だとは思っていましたがまさか、ここまでとは、ね?
クスクスと小さく笑い声をあげると何かを言い返そうと上半身を起こした彼女の頬、顎を左手で掴むとツツツ、と右の人差し指を彼女の首筋に這わせ指を躍らせる。
彼女のエメラルド色の瞳を見つめると自分で思っているよりも紅く燃えるような情欲に溺れた自らの瞳を映されてゾク…と背筋に何かを感じた
 「アーサーさん…?あ…」
マシュマロのように柔らかい彼女の唇を奪えば愛おしく、少しでもこの感情が彼女に伝われば良いなんてそんな事を片隅で思いながら舌で彼女の歯列を割り奥に隠された舌を探しだすと絡め取るように…しかし彼女を怖がらせない様にゆるやかな刺激を与え少しずつではあるが彼女の情欲をかきたてる様にぬるぬると絡めあえば上がった息をするのが精一杯の彼女。
そんな様子を見て唇を離すと二人の間に銀糸が繋ぎ、視覚的にも感覚的にも私の心を高ぶらせるには十分ではあったが、何も知らない彼女に…子供の様に無垢な彼女を汚しているのだから、ゆっくり、ゆっくり。


 彼女を私色に染めて良い…と言う事でしょう?
焦ることなど何も無い。私だけのお姫様なのだから…ね?フレイ…




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