この世界はお好きかしら?

□この世界はお好きかしら?
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誰かが呼んでいる気がする。

体がふわふわと揺れているような感覚から、冷たいものに体が密着したような感覚に変わる。
それと同時に体に痛みを感じた。
熱い・・・。そして頭が割れるように痛い。

「・・・どういうことだ?!」

人の気配がする。
しかも1人じゃない。
助けて、と声を出そうとするが辛すぎて声も出ない。
目を開けることすらままならない。

「たぶん、召喚魔法の負荷に耐えれなかったのでしょう・・・」

「くそっ・・・・ひ弱な人族など要らん。」

「申し訳ありません。古代魔法ゆえ私どもの魔力が足りなかったのかもしれません。」

魔法・・・?

「まぁ、良い。そいつは捨て置く。行くぞ。」

何だか、すごい言われようで、回らない頭では意味を飲み込めるはずもなく、深い暗闇へと意識を手放した。


どれくらい眠っていたのか、人の気配がする。

「どうした?こんなとこで・・・。あぁ、捨て置かれたのか。見つけちまったわしに感謝だな。」

声を掛けられ、一人で納得したらしい。
必死に声を出そうとするが、やはりまだ声は出せなかった。

「ん?大丈夫だ。連れていってやるからな。」

抱き上げられたのか、心地よい暖かさにまた意識を手放した。


ちゃんと意識がはっきりしたのは、だいぶ体が楽になってからだった。

「えっと・・・どこ?ここ」

見慣れない木材で組まれている天井。

「お、やっと気づいたか。体はどうだ?まだ痛むか?」

いきなり声を掛けられて、そちらを向くと髭を豪快に伸ばした小柄な男性がいた。

「とりあえず喉渇いてるだろう。これでも飲みな。」

差し出してきたコップを受け取るために上半身を起こす。
どうやらここは小屋のようだ。

コップを受け取り、一口飲んでみる。
ドロッとした食感と思いもよらなかった苦味に顔をしかめる。

「そんな顔するな。薬湯だ。ちゃんと飲んどけ。」

言われた通りに頑張って飲んで、コップを男性に返す。
もう少し寝ておけと言われて、横になったが眠れるわけもない。
ここはどこなんだろう。
それに、この男性。
ただ背が低いのかと思ったが、髪の毛からはみ出している耳が普通よりとんがっている。

小屋の中もかなり昔にありそうな造りだ。
暫く眺めていた光景に、明かに知っている場所ではない。
そんな場所で目覚めて、平気であるはずもない。
必死に思い出そうとしてみるが、思い出せるのは仕事が終わり家に帰って少しだけパソコンゲームをした後、明日も仕事だから寝なきゃとベッドに潜り込んだくらいだ。

ってことは、これはあれだろうか。
所謂、ファンタジー小説なんかで読んだことのある異世界転移、というやつだろうか?
それしか説明のしようもないような気がする。

これからどうすればいいんだ?と唸っていると、視界の端に見たことのあるアイコンが並んでいる。
そう、よくスマホゲームとかパソコンゲームとかにあるようなやつだ。
そのアイコンが、邪魔にならないような場所に見えている。
視界の上の方に細長いバーが2つ並んでいて、ゲームをよくしていた経験からすると、左の緑色のバーがヒットポイント、所謂HPバーで、右の紫色バーがマジックポイント、所謂MPバーだろう。
そして、右端にある⬇はなんだろう。

下・・・思いつくとすれば指を下にフリックする事くらいかな?
小柄な男性が、飯の準備をしてくると言って小屋を出ていったのを確認してから、思ったことをやってみると、ちょうど胸の高さに、これまた未来映画とかでよく見るモニター画面が浮かび上がった。

そこには見慣れた文字のコマンドが並んでいる。
プロフィール、装備、ユニット設定、ストレージ、クラン、パーティー、ペット、バッグ、異空間倉庫、フレンド、商店、ヘルプ、各設定。

試しにプロフィールの文字に触れると、さらに細かい表示が出てきた。

名前:月下 雫
種族:人族
年齢:19
職業:なし
レベル:10
スキル:全属性魔法・付与魔法・創造・鍛治・料理
戦闘力:SS
魔力SSS
知力:SSS
統率力:SS
称号etc.:異空間倉庫持ち・創造者・守護者・知識の伝導者・スマホ・神に愛されし者・異世界者

伴侶・子供:なし
所属クラン:なし
パーティー名:なし

どうやら、39歳だったはずが、19歳まで若返ってしまっているらしい。

まぁ、若返ったのは良しとしても、これは、不味いのでは?
スマホと神に愛されし者と異世界者は、どうみても不味いでしょ。
小説とかで有りがちなことといえば、異世界に来た場合、元の世界には戻れないのが前提なのだから。

メニュー画面にあるヘルプの文字に触れると、この異世界の情報が表示された。
だが、今ここで読むには些かゆっくり目を通せない。
後で、じっくり読めそうな時間まで待った方が良さげだ。


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