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□ゆき様へ
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 一組の布団に仰向けで寝ているギンと冬夜は、なかなか寝付けないでいた。

 いつもは乱菊とユキも一緒だから、どことなく寂しく感じる。

 
 「おとん。ユキのプレゼント何にしたん?」

 「またその話か?何でそんねん気にするんや?」

 「やって、二回もおとんと被ってるんやもん。今年は被らんようにしたい」

 ギンはムクリと上半身だけ起き上がると、冬夜の方を向いて片手で頬杖をついた。
 
 「別に被ってもええんよ。冬夜はユキを思って、一生懸命気持ち込めて作ったんやろ?」

 冬夜はコクリと無言で頷く。

 「せやったら、それでええやんか。被ったとか、被らんかったとかは重要やない。冬夜は冬夜の気持ち込めてるんやから、それだけで世界でたった一つのプレゼントになる」

 自分譲りの銀髪を優しく撫でながら、ギンは優しく笑った。

 「と、僕は思うで?せやから、冬夜は自分があげたいもん、プレゼントしたらええ」

 また、冬夜は無言で頷いた。

 いつもは子供っぽくて、冬夜とも本気で喧嘩をするギンだが、やはりそこは父親。

 (まだまだ敵わんなぁ、おとんには)

 いつもは憎まれ口を叩いているものの、それでも尊敬している。

 強くて、優しくて、家族思いなギン。

 ムカツク事も多々あるけれど、大好きな父親。

 

 冬夜はギンにギュウっと抱き着くと、その大きな胸板に顔を埋めた。

 その背中をポンポンしながら、ギンが言った。

 「ユキの誕生日きたら、すぐ冬夜の誕生日やろ?何か欲しいもんあるか?」

 開いてるのか開いてないのかよく分からない目でギンを見上げると、冬夜は笑顔で答えた。

 「欲しいもんはないけど、おとんがその日現世出張やったらええなて思ってるよ。そしたら僕、ユキとお母さん独り占めできるし、嬉しいわ」

 無邪気な笑顔で言い切った。


 「よし、その日連休とったる!旅行でも行こうや、冬夜の誕生日プレゼントや」

 「え?僕の話聞いてた?耳まであかんか、可哀想になぁ、おとん。ふざけるな」

 「ふざけとんのはお前や、クソガキ。乱菊とユキ独り占めなんか絶対させへん」

 「さっきも言うたやろ、男の嫉妬は醜いって」

 「よう聞こえませんなぁ?ほら、僕耳あかんらしいから」

 ギャイギャイまた喧嘩を始めた二人。

 隣室で眠っていた乱菊が目を覚ます。

 どんどん罵り合う声が大きくなっていき、眠さも相まって乱菊の怒りが爆発した。

 「うるさーい!!静かに寝ないと、外に放りだすわよ、あんた達ー!!」


 『おやすみなさーい』



 
 市丸家のとある夜の出来事。

 喧嘩と笑いと幸せに満ちた、何気ない日常。


 それは四人にとって、何物にも変え難い、



 幸福な日々ーーー




END
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