お題(ほぼギャグ)

□やめろ
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 『今日こそは貴様にクソ不味い飯食わせて、泣かしてやる』

 『お前の枕、顔面にぶつけてやるから覚悟しておくんだな』

 『風呂に沈め、暴れ泣き叫ぶ貴様を見るのが楽しみだ』

 『暑苦しい貴様と布団を共有するのは不本意だが、そこまで一緒に寝たいと言うのなら、寝てやらん事もない』





 一護に相談があるからと呼び出されたギンは、今自分の耳に飛び込んできた言葉達に、軽い眩暈を覚えた。

 呼び出された屋上に付くなり差し出された携帯電話。

それは一護の物で、最近変な電話がくるらしい。

出ると相手は無言。出なければ留守電にメッセージを残していくらしい。

それが冒頭の言葉である。


 この声は、ギンの教え子で一護のクラスメートでもある、ウルキオラ。

確かに態度も悪いし、無口で何を考えているのか分からない所もある。

 しかし、このようなメッセージを残すような人物には見えなかった。

 
 「で、どう思う?市丸。やっぱり俺、喧嘩売られてんのかな?」
 

 ガックリ…。

 (あかん、この子…。メチャメチャ鈍い…)

 ギンは一護の言葉に項垂れた。

確かに、一見嫌がらせのように思えるメッセージだが、ギンにはお泊りの誘いとしか思えない。


 ツンツンしてるように見せて、実はデレデレだ。

 「いやぁ、喧嘩売られてるわけやないんやない?これ、君を誘ってるやろ、お泊りに」

 「はぁ!?何処がだよ!絶対喧嘩売ってるだろ、これは!」



 「心外だな。そんな風に思われていたのか、俺は」

 ギンでも一護でもない、静かな声が響いた。

渦中の人物、ウルキオラだ。


 「何だよ、ウルキオラ。どう言うつもりだ、テメェ」

 ウルキオラの元へと歩み寄り、凄む一護。

 その刹那、ウルキオラの頬が赤く染まるのを、ギンは見逃さなかった。


 (変態といい、ウルキオラといい…、なんや変わった奴らに好かれる子ぉやね、黒崎君は…)


 「何を言っている。俺はただ泊まりに来いと誘っただけだ」

 (分かりにくい。ものっそい分かりにくいよ、ウルキオラ君)

 「なら初めからそう言えよ。とりあえず、留守電に変なメッセージ入れるのやめろよな」

 (…純粋に誘われてるて思とる、黒崎君…。あー、またウルキオラ君の顔赤なった)


 二人の姿を少し離れた場所から眺めていると、上手く話が纏まったらしい。


 「市丸、時間とらせて悪かったな。今日ウルキオラん家に遊びに行く事になった」
 
 「そうかぁ。気をつけぇや、黒崎君」

 「何がだよ?よし、行くぞウルキオラ。恋次と冬獅郎も誘おうぜ。あとは、石田に、チャドに…」

 指折り数えながら歩いて行く一護の背中を、ウルキオラは慌てて追いかけた。

 「いや、待て黒崎!俺は貴様だけと…」

 「あっ、白哉も誘って…。一角と弓親もいると楽しいな、うんそうしよう」

 「俺の話を聞け、黒崎ーーー!!!」


 (ご愁傷様、ウルキオラ君…。黒崎君は手強いでぇ…)


 二人の背中が見えなくなると、ギンは空を見上げた。

 愛しい人の瞳を思い出させる空の色に、ポツリと呟く。


 「…今日は乱菊のとこ行こう…」


 そして静かに屋上を後にした。







END

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