A

□Prisoner
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 「う〜ん…どう見ても人、やんなぁ?」

 ある一点を見つめて、唸りながら首を傾げる。

確かにお酒は飲んだ。
周りからはザルと言われ、あまり酔う事はないが、それでも平常時とは違う。

しかし目の前に横たわるソレは、ギンから見れば人に見える。

それも、全裸の女性…


 「僕、そんなに飲んだかな?これ、幻覚かな?いや、やっぱ幻覚ちゃうな」


 見た所、女性に外傷はない。うつ伏せに倒れているので、怪我をしていないとは言い切れないが。


長い金髪の髪が顔を覆っている為表情は見えないが、ギンが今まで生きてきた中でも初めて見るくらい、美しい肢体を晒していた。

 
 「天使?それとも、女神?いや、天女か?」

 とりあえずこのままではまずいので、着ている上着を女性にかけた。


 「…んっ…」

 女性は身じろぎをすると、顔にかかっている髪を払いながら、ゆっくり目を開ける。


 その目がギンをとらえると、二重の大きな瞳が細められ、口元に笑みが広がった。


 「…綺麗な銀色…」

 女性は呟くと、また静かに目を閉じた。


 ドクンドクン。

 ギンは自分の心臓の音を、確かに聞いた。

ありえないくらい速まる鼓動に戸惑いつつ、呆然と女性を見つめる。



 「うわぁ…。なんちゅう別嬪さんや…」



 これが市丸ギンと、松本乱菊の出会いであった。



****


 あの夜から三日。
あの日拾った女性、いや少女はまだギンの家にいた。

あのまま置き去りにして帰ることなど到底出来なかったし、普段面倒事を避けて通るはずの自分がそうしたくないと強く思ったのだ。


 起きたら帰せばいいと、自分の家に連れて帰りベッドに寝かせた。


 
 次の日の朝起きた彼女に、自己紹介をした。

 「僕、市丸ギン。よろしゅうな」

差し出した手をおずおずと握ると、少女はニッコリ笑った。


 「あたし、松本乱菊。よろしくね、ギン」


 乱菊の手は、異常に冷たかったーーー
 
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