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□瞳は狂気に揺れる
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 「先日の虚討伐。十番隊はえらい怪我人が出たそうですなぁ。十番隊長さん?ようそれで隊長張ってられますなぁ」


 隊首会が終わり、自分の隊舎へと帰ろうとしている日番谷冬獅郎に、ギンは声をかけた。

 普段からその容姿には不釣り合いな程深く刻まれたシワを、更に寄せながら冬獅郎はギンを睨みつけた。

冬獅郎から放たれる怒りを纏った霊圧にも、ギンは表情一つ変えずいつもの笑顔。


今はその笑顔も、冬獅郎には酷く癇に障る。


しかしそれはギンも同じだ。

確かにこの少年は天才だろう。

幼馴染である乱菊が尊敬の意を示す程、確かに抜きん出た才能もある。

だが如何せん、中身が追い付いていない。


 こうして痛い所をつかれると、霊圧を放出させ、怒りを顕にし冷静さを失う。

そんな子どもの傍に、乱菊が副隊長としているなど、我慢ならなかった。


 先の虚討伐で乱菊も怪我をしている。
しかもその傷は冬獅郎を庇っての怪我だと聞いた。



ー隊長を守るのは副隊長として当然の事ー


大切な幼馴染も、何においてもまずギンを優先する己が副官も、胸を張ってそう答えるだろう。


しかし、そんな副官を含めた隊員達を守るのが、隊長としての責任ではないだろうか。

 ギンはそう思っている。



 「てめぇには関係ねぇ事だ」


 冬獅郎とて乱菊が自分を庇って怪我をし、隊員達が傷付く様を目前にして、誰も死なずに済み良かったと思うような男ではない。


守れなかったと、自責の念にかられてきた。

だからこそギンの言葉が突き刺さるのだ。



 「関係ない…それ、本気で言うてるん?乱菊は僕の大切な幼馴染や。あんまり僕の光をかげらせるようなら…」


 ギンは冬獅郎の傍まで歩いて行くと、その顔を覗き込んだ。

いつも閉じられている眼が開かれる。


冬獅郎は思わず息を呑む。

心の底から震え上がるような、そんなギンの青い瞳に一瞬怯んだせいだ。



 「僕の手で、君を殺すからな」




 去って行くギンの後ろ姿を眺めながら、冬獅郎は唇を噛み拳をキツく握りしめた。


 

 (ほんま気ぃつけや?十番隊長さん)


 珍しく開かれたギンの瞳が、愉快そうな色をたたえながら冷たく揺れたーーー






END
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