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□子狐のざわめき
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 春麗かな陽気故に、毎年この季節になると抗い難い眠気に誘われる。

朝から数えて、何回欠伸が出そうになるのを噛み締めたやろか。


いつもは鬼の副隊長である藍染も、心なしか緩んで見えるのは、目の錯覚やない筈や。

隊員達も皆、満開に咲く桜を眺めては、その美しさに微睡んどる。

そんな五番隊舎において、第三席である市丸ギンだけは違っとった。



 ドス黒いオーラをそこら中に放出しながら、時折不気味な笑い声をあげている。


こら何ぞあったか?

春に似つかわしくないこのちびっ子の様子に、俺は深い溜息をついた。


当の本人は、いつも通り書類整理に勤しんでいる。

せやけどたまに吐き出される毒の数々は、上司としては無視でけへんもんも含まれとった。


例えば…。



 『…あのくそったれ…虚に殺られたと見せかけといて、僕の手でズタズタに引き裂くっちゅうのはどうやろ?』

 『人のモンに手ぇ出す事が、どういう末路を辿るか他の奴らにも思い知らさなあかんからなぁ…』

 『首は晒さなあかんから傷はつけへんけど…他のとこはどう捌いたろ』


 こんな言葉を書類に印鑑を押しながらブツブツ呟いてるんや。

それも、ええ笑顔で…。



 市丸をここまでにする人物は一人しかおらん。


 松本乱菊。

ギンの幼馴染である美少女。

 十中八九、彼女が関係しとるんやろ。



 「のぅ、市丸。何かあったんか?」

 平常心を保ちつつ問えば。

 「別に何も?ただ最近乱菊の周りをウロウロしとる目障りなゴミクズが目につくな、思いまして。駆除の仕方を考えとるんですわ」

 市丸はいつもの笑顔を浮かべながら、更には恐ろしいスピードで書類を捌きながらそう言うた。


 いやいや。

そないな事、爽やかな笑顔で言われましても…。

俺、この止まらん冷や汗どないしたらええん?

こんな時に限って狸ヨン様(藍染)は、資料を六番隊に届けに行ったまま帰ってこーへんし。


 はぁ…。
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