A

□君のぬくもりに包まれて
1ページ/1ページ

 「ほな、乱菊は僕が連れていきますわ」


 酔っ払って畳に伏してる乱菊を抱き上げ、呆然とした九番隊副隊長さんに笑いかけた。



 いつもの副隊長同士の飲み会に、イヅルも行ってたから、今日が飲み会なのは知っとった。


 イヅルは賢い子ぉやから、ちゃんと自分の足で帰って来たけど、気がかりが一つ。



 さり気なく聞いた、僕の幼馴染の動向。

そしたらイヅル、とんでもない事言いよる。


 「あと飲んでるのは〜、松本さんと檜佐木さんくらいですねぇ」


 九番隊副隊長さんが乱菊をどう思ってるのかは、僕以外の周りの人達もちゃあーんと、知ってる。


これはアカンやろと。


 「ただでさえ色っぽいのに、飲んだら色っぽさ十倍増しや…」


 ぶつくさ呟きながら飲み屋に向かう。

案の定檜佐木君に抱きついて絡んでる乱菊。

 とりあえず引き剥がしてみたら、乱菊は畳に伏して寝てしまった。

そして冒頭の場面へと繋がる。



 乱菊を抱えて彼女の自室に運び込み、布団に寝かせたら、乱菊が目を覚ました。

 「…ギンだぁ。あたしの大好きなギンだ」

 そう言って、僕の首に手を回している。

 「ギン、大好きよ?ギンはあたしの世界そのものよ?」



 そないな事言われたら、組み敷いてしまうやろ?

 乱菊を押し倒して、彼女の顔を見れば…。


涙いっぱい溜めて…

それは、今にも零れ落ちそうで…。



 ああ。


寂しかったんやな、乱菊…。

僕が置いて行った、あの日からずっと…。


 「ギンが、遠くに、感じるの…」

 「そんな事ないよ。僕はいつでも乱菊を想っとる」

 「じゃあ、どうして…そばにいてくれないの…?」

 「誰よりも君が、大切やから…」



 口づけを交わし、その身を抱きしめてやれば、酔いも手伝ってか乱菊はまた眠りに落ちた。






 明日になれば、今夜僕に言うた事も、僕が乱菊に言うた事も、きっと忘れてまうやろ。




 せやから、




 せめて、




 今夜だけは、君の傍にいさせてな?






END
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ