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 「乱菊さん、乱菊さん!今度現世の海に行きませんか?何人か誘って!」

 檜佐木が乱菊にそう提案しているのが、偶然ギンの耳に飛び込んできて、彼のこめかみに青筋を立てさせたのは、とある日のお昼休み。

十番隊舎での出来事である。

 昼食が済み、愛しの乱菊へと会いに来たギンは、彼女を驚かそうとご丁寧に霊圧も消してウキウキとここまでやって来た。

 いざ中に入ろうとしたら、中から楽しそうな声が聞こえてくるじゃないか。

一体誰とそんな楽しそうにしてるんやとドアに耳をくっつけていたら冒頭の言葉が飛び込んできたのだ。

 (海!?海やと?オイコラくそガキ!そないなとこ乱菊が水着姿で行ってみぃ。飢えた獣共の餌食になるやないか!大体水着なんかどっこも隠せへんやんか!裸同然や、裸同然!あかんあかん。そんなん僕以外の誰にも見せさせへん。余計な事言いくさってからに…)


 「あら、いいわねぇ!いつものメンバー誘って行こうか。楽しみ〜」

 ギンの心配をよそに、乱菊の浮ついた言葉が聞こえてきて、ギンはその場に打ちひしがれた。

 (せやんなぁ…乱菊はそういう子やった…。いつものメンバーって。檜佐木君、恋次君、イヅルにやちるちゃん。それから伊勢さんに雛森ちゃんに、射場はん。あとはルキアちゃんあたりやろか?)

 指折り数えて名前を呼んでいく…。

 あかん。あかんわ、ほんまに。男多い。ってか、男行くんやったら絶対あかん。
そこに最後のトドメが…。

 「乱菊さんの水着姿、楽しみだなぁ〜」

 ブチン。

切れた。何かが嫌な音と共に切れた。

 ギンは勢い良くドアに蹴りを入れた。
わぁ、ドアってこんなに簡単に粉砕されるんだぁ、知らなかったぁ☆てな具合に見事に粉々になっている。

 いきなりドアが粉砕し、ドス黒い霊圧を放つギンに二人は顔面蒼白になるとともに、嫌な汗が流れていた。

 「山の方が、ええんちゃう?」

 絞り出すかのような、低い声。

 「いっ、いっ、市丸た…」

 「僕は、山の方がええと思うけど?」

 「いっ、いいわねぇ!あああたし実は山に行きたかったのよねぇ!」

 「おおお俺もささ賛成だなぁ!楽しみだぁ!!」

 棒読みな上声も顔も引きつる二人に、ギンは霊圧放出をやめ、いつものニッコリスマイルに戻った。

 「ほな、山楽しんでおいで。あっ。それから檜佐木君にこの壊れたドアの修繕費まわすから、よろしく頼むでぇ」

 晴れやかな笑顔と共に、去っていくギン。

 残されたのは悲痛な檜佐木の悲鳴だったとか。

 

 おしまい。

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