過去拍手
□一万打企画拍手
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『少し遅くなる。先に店入って、待っとって』
久しぶりのデートに緩む顔を何とか普通に保ちながら、乱菊は仕事を早めに終わらせた。
いつもはたんまり積み上げられた書類も綺麗に片して、出来るなら毎日ちゃんとしろと上司に言われたのは、言うまでもない。
だが今の乱菊にはそんな小言も何のその。
なんてたって、三ヶ月ぶりのデート。
ゆっくり会えるのは久しぶりなのだ。
ウキウキ気分で会社を出ようとしていたところに、飛び込んで来たメール。
思わず溜め息が出た。
しかし、これまでの寂しさから比べたら少し遅れるくらい何でもない。
気を取り直して足早に家へと向かい、シャワーを浴びた後この日の為に買った服に袖を通した。
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「…少しって、書いてたわよね?…少しって…」
待ち合わせの時間は19時30分。
そこから少し遅れるとなると、早くて20時、遅くても20時30分には来ると思っていた。
現在の時刻は21時を少し過ぎたところである。
「こんなに遅れるなんて聞いてないわよ。電話も繋がらないし、メールの返事も帰って来ない…バカギン…」
そろそろ周りの視線も痛い。
誰もが息を呑むほどの美しさを持つ乱菊。
その美女が、予約席でただ一人座っているのだから。
何事かと思われているに違いない。
結局21時30分まで待って、乱菊は店を後にした。
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家に着くなり新しく買った服を脱ぎ捨て、綺麗にまとめた髪もグチャグチャにした。
冷蔵庫からビールを出し、怒りのままに飲み干していく。
涙が出てきた。
楽しみにしていたのだ、この日を。
新しいプロジェクトを任されたギンの重荷になりたくなかったから、メールも電話も控えめにした。
ギンの方から仕事の目処がたったから、久しぶりにデートしようと、言ってきたのに…。
「馬鹿みたい…」
未だ鳴らない携帯を壁に投げつけ、適当に服を着ると、そのまま家を飛び出した。
一人はもう辛かったーーー
続く