銀猫の導き・二
□高嶺〜僕は君のもの〜
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(ヤバッ…)
家の前で今日知り合った女を抱きしめてると、女の肩越しにカーテンの隙間からこっちを見ていた乱菊と目が合った。
綺麗な深い青色の瞳はみるみるうちに怒りを滲ませ、最初は驚いていた顔も、いつの間にか鬼のような形相。
こらヤバイ。
いつもは寝てる時間や思て、油断しとった。
僕が帰ってこーへんから、心配で起きとったんやろう。
思わず笑みが溢れる。
(ほんま可愛いなぁ、乱菊は…)
こないな女に構ってる場合やないわ。
女の腰から手を離し、ほなねと手を振って家の中に入ろうとしたら、右手をグイッと掴まれた。
「待ってよ。ねぇ、私達付き合わない?」
媚びたような笑顔。別に不細工やない。まぁ、美人の部類やろう。
歳は僕より一つ下。せやけど、僕の心には何一つ響かへん。
(たかだか数時間遊んだっただけで、調子のりよって…)
「僕、別に君に興味ないし」
「どうして?相性は良かったじゃない?」
「関係ない」
「冷たい言い方ね」
若干声に苛立ちを見せながらも、女は尚もすがってくる。
「付き合ってくれないんだったら、キスして?それで諦めるから」
ああ、ホンマに鬱陶しい。
「僕、大切な子以外とキスせぇへんの。はよ帰れや」
声をワントーン落として、それでも笑顔を絶やさず言うたけど、女の顔は真っ青になっていった。
あらら。そないに怖い顔やったかな?僕。
女は慌てて車に乗り込むと、去っていった。
「さてと。お姫さんの機嫌でもとりに行きましょか」
自宅ではなく隣家の門を潜ると、合鍵を使って中へと入った。
この家の二階、階段を上がってすぐの部屋。
そこに僕のお姫様がおる。
世界で一番可愛い、僕の愛しい人がーーー