銀猫の導き・二
□まほろば〜世界の彼方までも〜
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一 消えた残像
おかしい。
いくら探っても、乱菊の力の名残すら感じられない。
ギンは己が世界が壊れ始める音を、頭の隅で聞いた、気がしたーーー
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道なき道を走っている。
それはいつもの事で、何も珍しい事じゃない。
ただいつもと違うとすれば、乱菊が隣にいないという事。
どうして、何故、なんの為に…
色々な疑問が頭を過ぎっては、分かりきっている答えに奥歯を強く噛み締めた。
乱菊の最近の態度をみていれば、いずれはこうなると分かっていた。
それでも余裕があったのは、乱菊の力がギンは眠っていても分かるからだった。
それが全く分からない。こんな事は初めてで、ギン自身気が狂いそうな程だ。
自分の世界と言っても過言ではないくらい、大切な乱菊。
その乱菊がいない。
何処にもいない。
力を感じ取る事ができない…それが何を意味するかなんて、良く分かっている。
認めない。認めない。認めない。
「…っ…乱菊ーーー!!!」
声の限り叫んだ。愛しい人の名前を。
それでも返事は、かえって来ないけれど…
頼む、乱菊。
戻ってきて。
ボクを、置いていかんといてーーー
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