彩歌

□Epirogue
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 あたしの人生には、あんたが必要なの。

 だから早く、その顔見せなさいよね。

 ギンーーー




 
 空座町での戦いから、ギンが消えてから今日で二年。


あたしは相変わらず十番隊副隊長として、忙しい毎日を送っている。

 あの戦いの後、欠けていた五番隊と九番隊には、平子隊長と六車隊長が復帰した。

 でも、三番隊隊長は不在のまま。

吉良が拒んだの。他の人が三番隊隊長になるのを。



 
 「お〜乱菊とイヅルやないか。こんなとこで二人してサボりか?」

 
 偶然廊下で会った吉良と一緒に甘味屋でお茶してると、平子隊長がやって来た。

 
 「まぁ、そんなとこです。あれ、雛森は一緒じゃないんですか?」

 「桃は今日非番や。せやからたまにはサボろ思て。桃、ほんまクソ真面目やから、仕事サボるて事ないやろ?」

 「普通、サボっちゃいけないんです!」

 雛森同様、大真面目な吉良が当然とばかりに胸を張った。

 
 「お前も難儀した口やろ?ギンもようサボる奴やったんやて?」

 「そりゃあもう、松本さんと同じくらいには」

 「ちょっと、あたしの話はいいでしょ?それにあたしはギンほどサボってなかったわよ」

 「いや、僕からしたらお二人とも同じくらいだと思います!」


 あたしと吉良のやり取りを見て、平子隊長が楽しそうに笑った。


 「イヅルはギンの事、どない思う?」

 「それは生きてるかって事ですか?」

 「せや」

 「生きてらっしゃいますよ。だからこそ、僕は三番隊隊長の座を空けて、待ってるんですから。だって僕が…」

 『僕が?』

 平子隊長とあたしの言葉が被った。

 「いえ、何でもありません。でも、必ず市丸隊長は、帰ってきます。そう思ってます」


 そう。あたしも同じ事考えてるわ、吉良。

 ギンは死んでない。必ず帰ってくるって。

 それは、平子隊長も同じ。

あの戦いの後、ギンを思って泣くあたしに、喝を入れてくれたのも、平子隊長だった。


 『乱菊ちゃんが信じひんで、どないすんねん。乱菊ちゃんが知ってる市丸は、こないな事で死ぬようなひ弱な奴やったか?』
 

 それと同時に、謝罪の言葉も言った。


 『ごめんな。俺が何が何でも、百年前に藍染を殺しとくべきやった。もっと市丸の話を聞くべきやった。乱菊ちゃんも雛森ちゃんも、こない悲しまんで良かったのに…』


 それこそ、平子隊長が謝る事なんて何もない。

 平子隊長こそ、辛かったはずだ。


 「そうね。帰ってきたらぶん殴ってやんないとね!


 「はい。帰ってきたら、もうサボらせませんよ、僕」


 吉良も強くなったと思う。

前は頼りないなって思ってたけど、目に強さを感じるようになった。

吉良自身も、必死で三番隊を守って来たんだ。


 「俺は嫌がらせに抱きしめたろ」


 リアルにその場面を想像して、あたしと吉良は大笑いした。

 固まったギンを想像すると、無性に笑える。




 ねぇ、ギン。

みんなあんたの事、待ってるわよ?
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