Request

□KANA様へ
2ページ/6ページ

 僕と乱菊は同じ大学に通ってる。

 専攻は違うけど、時間が空いたらとにかく一緒におる。

 やけど、お互いに気持ちを明かした事はない。

 こんだけ近くにおって、一緒におって、気兼ねなく接する事ができるのに、僕らは恋人やない。


 周りには付き合ってるて思われてるのに、そうやないこの事実。

 そら赤ん坊の頃から一緒におれば、隣におるのが当たり前、みたいになるのは当然かもしれへんけど…。

 

 ほんま最近の僕は、欲張り。

 確実な答えが知りたくて、今の関係から一歩進んだ関係になりたがる僕は、ほんま欲張りやわ。


 「なぁ乱菊。今日はどうやって起きたん?まさか自分で起きたわけちゃうよな?」

 大学までの道すがら、努めて明るく僕は聞いた。

 乱菊もいつも通りの声で答えた。

 「当たり前じゃない。あたしが朝弱いの、ギンが一番知ってるでしょ?冬獅郎が起こしてくれたのよ」

 
 あぁー…冬獅郎。…冬獅郎、なぁ…。

 乱菊が他の男呼び捨てにするんは珍しくもないのに、今は何や面白くない。

 「ギンにばっかり迷惑かけるなって、怒られちゃったわ。ごめんね?いつも大変だったでしょ?」


 んな訳ないやん。

 大変やなんて、思った事ないし。

 むしろ嬉しいけどな?乱菊のそういう誰も知らん姿、見れるんは…。
 
 それに何なん。日番谷君に言われる筋合いもないわ。


 「…ほんと、反省した、のよ?あたし、ギンが隣にいるのが当然!とか思ってて…。あんたに迷惑かけてるなんて、これっぽっちも思ってなくて…」

 
 隣におるのが当然…?

 乱菊も僕の事、そう思ってくれてたんや。

 「迷惑やないし、当然の事やろ?」

 「え?」

 「乱菊の隣に僕がおる。それって、当然の事やろ?」

 乱菊の腕を掴んで真剣な目で見つめれば、乱菊の顔が赤くなっていった。

 この反応は…。

 「なぁ?乱菊。そうやろ?」

 「えっ!?やっ、ちょっ!!」

 ますます顔を赤くして、挙動不審になる乱菊。


 もうひと押しや。そう思たのに…。

 「公道のど真ん中でセクハラしてんじゃねぇーよ」

 後頭部を誰かに殴られて激痛が走る。

 その原因が日番谷君て、声で分かった。

 ってか、絶対わざとやろ?

 わざと僕の邪魔したやろ?

 「あっ、とっ、冬獅郎!?」

 「電車に乗り遅れるぞ、松本」

 「そ、そうね!えと!じゃ、ギンまたね!」

 乱菊はそう言うと、僕達を置いて走って行った。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ