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□キャサリン様へ
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「ほな、俺は先行くからな。お前も気ぃつけて学校行けよ」
靴を履きながら、平子さんが僕を振り返った。
「うん。今日からおんなじ学校やね」
「せやな。入学式、遅れんなよ」
僕の頭をグシャグシャ撫でてから、平子さんは家を出た。
「さて、と。僕も準備しよか」
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僕と平子さんの共同生活は、かれこれ五年目を迎える。
男好きやった母親は、若くで僕を産んだ。
父親が誰か、教えてもらった事もない。。
あんま家におらんかったし、僕の事も興味無さそうやったし。
そのうち捨てられるかもな、思てたらほんまに捨てられた。
捨てられたっていうか、施設に連れて行かれたんやけどな。
『必ず迎えに来るからなぁ』
母親はそう言うたけど、それが嘘なんも分かっとった。
あの人は実の息子である僕よりも、男を選んだんやから。
その時、僕は5歳やった。
でもな、悪いことばっかりでもなかったんよ。
預けられた施設で僕は、生まれて初めての恋をした。
松本乱菊。
僕の愛しい人の名前。
太陽みたいに輝く金髪。
僕と同じで青い眼に、端整な容姿。
性格は可憐な容姿からは想像出来んくらいサバサバしとって、明るい。お転婆。
周りから気味悪がられてた僕の銀髪を、『綺麗』と初めて褒めてくれたんも乱菊やった。
その施設で三年間、乱菊と一緒に暮らしとったけど、優しそうな夫婦に引き取られていった。
それから乱菊とは会えへんまま、更に二年。
十歳の時に僕も平子さんに引き取られた。
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