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□ゆき様へ
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 ユキが一歳の誕生日には、自分で編んだ靴下をあげた。

 料理や裁縫など、家事全般が出来るところはギンに似ている。

ギンについて回るうち、編み物なども覚えていた。

 その腕前は、乱菊が自己嫌悪に陥る程だ。

 冬生まれにちなんで、少しでも温かいものをと。

 ユキの小さな足を思いながら編んだ靴下は、見事にギンと被った。 
 
 去年の誕生日は、ポンチョだ。

 少し難しかったが、ギンと被らないようにと難易度をあげた。

 それでも被った。

 更にギンの方が毎回出来栄えがいいのも、冬夜の闘争心に火をつけた。

 今年こそは!と意気込むのも無理はない。


 (去年はポンチョで被った。正攻法でいったらそこは手袋かマフラーやろ。せやけど僕は敢えて外しておとんと被った。せやから今年は手袋とマフラーにしたろ思ったけど、おとんもおんなじ事考えてるかもしれへん。せやったら何や。ベストか、セーターか…いや、ベタすぎるか?)

 お風呂に浸かりながら、色々と考える。

 「冬夜〜、僕も入るでぇ」

 脱衣所からギンに声をかけられ、これはチャンスとばかりに目が煌めいた。


 一通り洗い終えたギンも、湯船へと入ってきた。

 「今日はえらい冷えるなぁ」

 「せやなぁ。っで?おとん、ユキのプレゼント、決まったん?」

 冬夜の問いに、ギンはニンマリと笑った。

 「決まっとるよ。っちゅうか、もう出来上がっとるしな」

 「へぇ。また手作りなんや?」

 「当然や」

 「何作ったか、教えてくれるおとんやないよなぁ?」

 「当たり前やろ」

 全く同じ笑顔でやり取りをする親子。

 だんだん黒い笑みになっていくところまで似ている。
 
 結局何も聞き出すことができないまま、冬夜は先に風呂場を出た。


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