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□ゆき様へ
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 頭を拭きながら居間に行くと、乱菊とユキが絵本を読んでいた。

大好きな母の膝の上で、ユキはとても嬉しそうだ。

 ユキの将来像は嫌と言うほど分かっている。

 美人で綺麗で可愛くてナイスバディ。

 (あかん…。狼共の餌食になってまう。僕が守らな!)

 そう決意したのはユキが生まれてすぐの頃だ。


 「あら、冬夜。何そんなとこにつっ立ってんのよ?」

 乱菊の声に顔をあげたユキは、冬夜の姿が目に入るやいなや、嬉しそうに駆け出し、冬哉の着物の裾をギュウとにぎった。

 「にぃに!にぃにも!」

 ニコーと笑えば、冬哉にかなりのダメージを与えられるユキ。

 冬哉は思わず声を上げた。

 「お母さん、こんな所に天使がおるー!」

 「あんた、ほんとユキ馬鹿よねぇ」

 「そら、女神の子どもは天使に決まっとるやろ」

 そこに風呂から上がったギンも加わる。

 「あんたもだったわね。ほんと、あんた達似てるわ」

 乱菊の声には若干の呆れが含まれているものの、その声音は優しい。


 「とうたん」

 ギンを見上げて笑うユキ。

ギンは9999のダメージを負った。

 「あぁ〜、天使や〜!天使がここにおる〜」

 ユキを抱き上げ、その頬にチュウをするギンをジト目で見ていた冬夜が、口角をこれでもかと吊り上げ言った。

 「なぁ、おとん。女神の子は天使なんやろ?せやったら、僕も天使やねんなぁ?」


 こんな黒い笑顔の天使おったら、怖いわー!!!
 もはやその黒さは悪魔のソレに匹敵するやろー!!!


 ギンは心の中でこれでもかと言うくらい叫んだ。

 「なぁ、どうや?おとん。僕も天使やんなぁ?」

 
 あぁ、何でこんねんも僕に似てもうたんやろ!?
これ、あれやろ?怒ってんねやろ?
ユキにチュウしたん、怒ってんねやろ!?
せやのに直接そこには触れへんと、ネチネチ責めてきよる!!
この陰険さ、僕にほんまそっくりー!!!



 それでも、やはり冬夜は自分の息子。
 格別に可愛いのは事実。

 ギンは頭をガシガシ掻きながら冬夜を抱き上げると、ユキにしたように冬夜にもチュウをした。


 「そんなん、当たり前やろ。お前は僕と乱菊の、可愛ええ天使や」

 
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