Request
□ゆき様へ
3ページ/6ページ
頭を拭きながら居間に行くと、乱菊とユキが絵本を読んでいた。
大好きな母の膝の上で、ユキはとても嬉しそうだ。
ユキの将来像は嫌と言うほど分かっている。
美人で綺麗で可愛くてナイスバディ。
(あかん…。狼共の餌食になってまう。僕が守らな!)
そう決意したのはユキが生まれてすぐの頃だ。
「あら、冬夜。何そんなとこにつっ立ってんのよ?」
乱菊の声に顔をあげたユキは、冬夜の姿が目に入るやいなや、嬉しそうに駆け出し、冬哉の着物の裾をギュウとにぎった。
「にぃに!にぃにも!」
ニコーと笑えば、冬哉にかなりのダメージを与えられるユキ。
冬哉は思わず声を上げた。
「お母さん、こんな所に天使がおるー!」
「あんた、ほんとユキ馬鹿よねぇ」
「そら、女神の子どもは天使に決まっとるやろ」
そこに風呂から上がったギンも加わる。
「あんたもだったわね。ほんと、あんた達似てるわ」
乱菊の声には若干の呆れが含まれているものの、その声音は優しい。
「とうたん」
ギンを見上げて笑うユキ。
ギンは9999のダメージを負った。
「あぁ〜、天使や〜!天使がここにおる〜」
ユキを抱き上げ、その頬にチュウをするギンをジト目で見ていた冬夜が、口角をこれでもかと吊り上げ言った。
「なぁ、おとん。女神の子は天使なんやろ?せやったら、僕も天使やねんなぁ?」
こんな黒い笑顔の天使おったら、怖いわー!!!
もはやその黒さは悪魔のソレに匹敵するやろー!!!
ギンは心の中でこれでもかと言うくらい叫んだ。
「なぁ、どうや?おとん。僕も天使やんなぁ?」
あぁ、何でこんねんも僕に似てもうたんやろ!?
これ、あれやろ?怒ってんねやろ?
ユキにチュウしたん、怒ってんねやろ!?
せやのに直接そこには触れへんと、ネチネチ責めてきよる!!
この陰険さ、僕にほんまそっくりー!!!
それでも、やはり冬夜は自分の息子。
格別に可愛いのは事実。
ギンは頭をガシガシ掻きながら冬夜を抱き上げると、ユキにしたように冬夜にもチュウをした。
「そんなん、当たり前やろ。お前は僕と乱菊の、可愛ええ天使や」