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□KANA様へ
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「ほんま意地の悪い子やねぇ」
僕の横を通り過ぎながら、日番谷君は舌を出した。
その表情がまた、何とも憎たらしい。
遠ざかって行く日番谷君の背中を見ながら、僕は笑った。
(確かに邪魔はされたけど、あの子のお陰で乱菊が自分の気持ちに気づきつつある。この手を逃したあかんな)
幼馴染から進んだ関係。
それこそが、僕の望み
君の隣は、僕のもん。
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「ねぇ、七緒。あたしとギンって、あんたの目にはどう映ってる?」
授業が始まるまでの間、一番仲の良い伊勢七緒に聞いてみた。
ギン程じゃないけど、七緒とも付き合いが長い。
「どうって、ただの幼馴染みに見えないのは確実ですよね。むしろ、早く付き合えば、的な」
「やっぱりそうなのね…」
あたしだって分かってる。
ギンとあたしが、周りから付き合ってるって思われてることくらい。
そりゃそうよねぇ。
あたし達、ほんと一緒にいるもん。
「乱菊さんだって、市丸君の事好きなんでしょう?」
「っう…それは…」
そうなんだけど…。
でも、今更なんか恥ずかしいじゃない。
毎日一緒にいるし、それこそ生まれた時からよ?
今更、何て言うのよ?
「うかうかしてて、誰かに獲られても知りませんよ?ああ見えて、市丸君、モテるんですから」
ゴーーーン…。
頭に衝撃が走った。
そう。そうなのよ…。
糸目でニヤニヤしてて、何考えてるのかよく分からない顔してるくせに、あいつモテるのよね。
「あいつの良さなんて、あたしだけが知ってればいいのよ…」
思わず出た言葉に、七緒がジトッと見てくる。
しまった!もう、恥ずかしいったらありゃしない。
ギンの事となると、何故かうまくいいかない。
美人で、格好よくて、姉御、なんて言われてるけど、ギンの事となるとてんで駄目。
でも、あたしはもうずっと、ギンの事が好きで…傍にいたくて…。
「その様子じゃ、大丈夫みたいですね」
「何が?」
「最近噂になってますよ?乱菊さんが、銀髪の高校生と怪しいって」
銀髪の高校生…。
って、もしかして冬獅郎ー!?
あの子は遠い親戚で、今うちで預かってて弟みたいな存在で…。
「何よそれー!!」
あたしは周りの目なんか気にすることなく、叫んでた。
だってあたしの指定席は、ギンの隣だもの。
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