彩歌
□恋情
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目を覚ますと涙がつたった跡が、頬にありありと残されていた。
「何や…。ずいぶん、優しくて綺麗な夢やったなぁ…」
ここは虚圏。何もあらへん、闇に包まれた寂しい場所。
桜を、もう一度見る事は出来るんやろか。
もう一度、乱菊とあの桜を見たいな…。
この戦いの末に、僕は乱菊の元へと帰ることができるんやろか。
帰りたい。帰って今度こそ、ちゃんと傍にいたい。
藍染と東仙さんと裏切る前、一度だけ乱菊を抱いた。
「この先、もし離れ離れになる事があったとしても、僕はきっと乱菊の元へ帰ってくるから。せやから何があっても、笑顔でおってな」
そして僕達は、強く強く、お互いを抱きしめ合った。
なぁ、舞い踊る桜の花弁よ。
もし僕が死んでしもたら…ひとひらでええねん。
僕の大切な想いを、どうか彼女に届けてくれへんやろか。
愛してるってーーー
さぁ、そろそろ行こか。
僕の最後の戦いが、幕を開ける。
空座町での大決戦が。
『どうか一弁、愛しい人へ…』