マギ1
□溶けた熱
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天気の良いある日、廊下を歩いていたらいきなり赤い髪に拉致された。
屋根の上に連れて行かれ、膝の間に座らせられる。
抵抗する間も無く、唇を押し付けられて、そのまま……さっきからキスの嵐だ。
『ん、ちょ…マス、ルールや、だ』
息継ぎの合間に反発してみると、不機嫌そうな視線が私を見下ろしていた。
「なんスか」
『くる、し』
あまりにもキスされすぎて唇がヒリヒリする。キスから解放されたのに息が全然整わなくてマスルールの甲冑に額をつけると、冷たくて火照った頬に気持ちよかった。
「…あんたが、」
『っふぁあ!』
"先輩の剣術を見に行こうとなんてするから"
そう耳元で囁かれて、耳朶を甘噛みされると、完全に腰が抜けてしまった。
はむはむと耳を食べる勢いで噛み付くので怖くて半泣きになる。
いや、さあ、見に行こうとしたけど別にシャルのことが好きな訳でもないし、なんでそんなに警戒するの?
一応自分の言い分を胸に、キッと彼を見上げると口に出したわけでもないのに、マスルールの眉間にしわが寄る。
私の不満を感じ取ったみたいだ。
「…ナマエが先輩を好きになったら困る『ならないから』
「……」
即答したけれども、マスルールからの疑惑の視線は緩まない。
全くこいつはけっこう失礼だな!そんなに軽い女に見えてるのか。と、つい腹立たしくなってしまい屋根の上にも関わらず叫んでやった。
『私、マスルールが大好きなんだもん!』
言ってみると思いの外恥ずかしく、マスルールの腕から逃げ出そうとした。
もちろん、逃げられるわけもなく後ろから抱きつかれる形になっただけだ。
肩に頭を埋められて当たる髪がこそばゆい、また噛まれるのかと身構えたが、ふと気づいた。
首筋に当たる彼の耳が熱い、口元に着いたピアスがより冷たい。
「…なら、他の男の匂いを付けに行かないでください」
マスルールの耳の熱さはすぐ自分の体温に交じって分からなくなった。
『……ん、分かった』
シャルさんには悪いけど剣術を見に行くのは見送らさせてもらおう。こんなかわいい彼を放っていけるわけない。
あとがき
嫉妬して最終的に照れるまっさんです。
シリアスにならないようにがんばってます、切実に。