マギ1
□バレンタインのお返しに、
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聞いてください。
奇跡が起こりました。
就業時間に仕事が終わった。
ジャーファル様を上司に持って早数年、シンドバッド王のさぼり癖の弊害がこちらに回ってきていたので、就業時間に仕事が終わったことなんかなかった。
毎日毎日毎晩毎晩ジャーファル様は徹夜を繰り返し、私と八人将のヒナホホ様の娘ちゃんもほぼ交代でそれに付き合い、逃げ出すシンドバッド王を捕まえ、ジャーファル様を失礼ながらも強制的にベッドに押し込んだこともしばしば…。
きれいに片付いた机は長らく日を浴びていなかったせいか日焼けせず新品みたいだ。
その周りを軽く掃除すると本当にやることがなくなって、感動のあまり娘ちゃんに抱きついたら、彼女もしっかり抱き返してくれた。
こんな時間に行動の選択肢ができたことなんかほとんどなくて、とりあえずせっかくだから王宮の外で食事をとろうって娘ちゃんを誘ったけど、彼女は久しぶりに弟妹たちとも食べたいからって断られた。残念。
ごめんねという娘ちゃんをいいよーまた明日ねーと、見送ったはいいものの、途端に手持ち無沙汰に感じていつものイスに座り込んでぼやぼやと、あまり見たこともなかった天井の唐草模様を見つめて何をしようか考える。
あー、家族で食事か…。
『いいなぁ…』
「なにがです」
どうやら口に出してたみたいで、ジャーファル様が私を不思議そうに見下ろしていた。
『へ、あ、じ、ジャーファル様』
「はい」
『あの、仕事はおわったのでは…』
「ナマエこそもう仕事は終わったでしょう。帰っていいのですよ?」
『こんなことって今までなかったので、どうやって過ごしたらいいのかよく分からないんです』
「…それもそうですね」
こんなに和やかに話ができるのもいくらかぶりで、それにさえ私はいたく感動した。
王様がしっかり仕事をしてくれる人ならこれが普通なんだろうけど…、ところでジャーファル様は何か用事があって戻ってきたのだろうか。
もしかして仕事が残っていたりしたんだろうか、それなら、私は手伝った方が良いかな…。
「ナマエはこれから暇ですか」
『はい』
やっぱり、仕事が残っていたみたいだ。
「なら食事にでも行きません?」
『はい…っぇえ?!』
驚き過ぎてつい大きな声が出てしまい、ジャーファル様の眉間にしわがよった。
「……嫌ですか」
『そ、そんなことないです』
と言うわけでジャーファル様と食事に行くことになりました。