マギ1

□バレンタインのお返しに、
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月が満ちつつある今日は夜なのに明るく、ジャーファルさんの銀髪がキラキラと反射していてきれいだった。



「おいしかったですか」



『はい、とても!…本当におごってもらってよかったんですか?』



「気にしないでください、いつもナマエはがんばってくれてますから」



『あ、ありがとうございます』



照れながらお礼を言うと、ジャーファルさんが柔らかく笑った。うん、目の下に濃い隈を作って怒ってる人とは思えないぐらいかっこいい。
そこで少し話が途切れた。大通りに出るととても賑わっていて喋るのが困難になったからだ。
それに、有名人のジャーファルさんが人々からの視線を集めていて話し掛けにくかったのも大きかった。

2人で横に並ぶのもきつくなったのでジャーファルさんの背中を追う形になると、ジャーファルさんが私に歩幅をあわしてくれていたことに気づいて恥ずかしいのと嬉しいので顔が赤くなった。


王宮の付近に来ると、少しずつ静かになって人通りも減ったので気になっていたことを聞いてみた。

  


『ジャーファルさん』



「はい」



『今日は何の日だったんですか?』



「あぁ…"ホワイトデー"です」



『ホワイトデー…』



門の前に立っていた衛兵さんが門を開けてくれると、王宮はもう随分静かになっていた。



「リョウの国ではバレンタインデーのお返しをする日だそうです」
  



『お返しが大きすぎますよ』



たしか私が渡したのは義理チョコに+αのチョコレートだった。



「そうですか?」



そうですよ、そう言って私は少し笑ったけどジャーファルさんは笑わなかった、蕾を膨らませた花の並んだ庭で歩みを止め、私を振り返った。

その真剣な瞳に私の口元からもかすかな笑いが消えた。




「私はそうは思いません。ナマエと2人で食事も出来ましたしね」



『ジャーファル様…?』



一応、王宮内に入っていたので呼び方を直すとジャーファル様が悲しそうな顔をした。その顔が見てられなくて視線をずらすと、ジャーファル様が近くに来るのが分かった。



「……私は何も思っていない人におごったりはしませんよ」
  


『……』



ジャーファル様は、きっと今日の月がきれいだからホワイトデーに酔ってるだけだって思い込みたかったけど、そんな人じゃないって私はよく知ってる。



「ナマエ。私はあなたにとってただの上司ですか」



『……いえ』



自分の顔に血が集まって私の顔は真っ赤だ。耳まで赤いかも。

本当に今日はあちこちで驚いてばかりだ。



「ナマエ、名前を、呼んでください」



今日の月に酔ってるのは私かも知れない。
ジャーファル様がクーフィーヤを外して、私の手を握るとずっと隠してきた思いがこみ上げた。



















あとがき

ジャーさんの夢がアンケートで多かったにもかかわらずなかなか書けず、ホワイトデーにあわせてがんばろうとしたものの二時間ほど間に合わず…、最後の詰めはほんとにぱっつぱつになりました
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