マギ1
□4.そんな顔をするな
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遠くで誰かが泣いていて、近くでも誰かが泣いていた。やがて、その声さえも聞こえなくなって、残ったのは焼き尽くされ面影もなくなったシンドリアの土地と声を枯れさせたわずかな国民だけだった。
残された土地で何とか身を寄せ合い夜をしのいでいると、ふとナマエの姿が見えないことに気づいた。自分自身が相当参っていることは分かっていたが彼女が心配でならず、ふらふらとした足取りで無惨な街跡をさまよった。
彼女は王宮を抜け出してはよく遊んでいた友だちの家の跡で崩れ落ちて、ひたすらに追悼の歌を歌っていた。そのナマエの四肢にも包帯が巻かれており、彼女さえも護れなかったのかと自分の弱さを痛感した。
嗚咽が痛々しく、歌声は細く、途切れ途切れで、ナマエが息絶えてしまいそうな気さえして、それを引き止めるためにその小さな背中から覆うようにして抱きしめた。
彼女はその瞬間に泣き落ちた。
なんで、どうして、と繰り返し叫び、俺の腕から逃げるように暴れた。
俺はそれを抑えつけて宥めすかすしかできなかった。
ナマエは落ち着いたころには声は枯れ、軽い引きつけを起こしていた。
「すまない」
俺がナマエに囁いても彼女は大した反応もしなかった。だから、俺は勝手に語りかけた。
「俺はもう一度この国を作り直す」
彼女の体がびくりと痙攣した。
「平和を保てるだけの力を持ち」
胡座をかき、その上に彼女を横抱きにして乗せて、泣きはらした瞼を優しく撫でた。
「国民が安全に暮らせるような国を」
俺がそう言うとナマエは生きているのに死んだような顔のままようやく俺を見た。
「だから、そんな顔をするな」
ナマエが笑顔を見せてくれるならば、
あとがき
何故かまた時間軸が逆戻りしてしまったという…残念
そして、主旨が若干…いや、大分?ずれつつある…無念!!
あと少しお付き合いください