マギ1

□月見酒
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八人将の皆さんは大概お酒を飲む方だと思う。王様があんなの(失礼)だから部下も主に似るんだろうか…。



そして、八人将のまとめ役のヒナホホ様もよく飲む。体のサイズを考慮してもアルコールに対する免疫…?が強い。
それでも、お酒を水を浴びるように飲むようなことはせず、いつだって何気に一杯一杯を味わって飲んでいるのが垣間見えて、最高に格好良かった。
給仕の途中だったのに、もう、周りにいる人が霞んで消えるくらいに私の目線はヒナホホ様だけを捕らえていた。


それ以来だ。



…うん、ちょっと…いや、だいぶ好きになっちゃってるかも……。










まあ、私はしがない女官で、ヒナホホ様は八人将で、歳の差も私は全く気にしないタイプだけど、子どももいらっしゃるし…。いや、けど私子ども好きだし、体格も比較的大きい方だし、あ、でも美人じゃないよなー…。



そんな一目惚れした瞬間を思い出している今日も今日とて謝肉宴。

なんとか大したミスもせず、遠くからヒナホホ様を眺めつつ給仕を終え、交代した後は自分もお酒を飲んだ。実は利き酒とかも案外得意な酒好きだったりする。
そして油断してつい飲み過ぎた分が悪い加減に回ったみたいだった。酒によって理性もおざなりになった思考(妄想)は止まらなかった。どんどんどんどん加速していって、行き着くところまでいってハッと我に返る。
上気していた頬が一瞬で冷めた。



『私、何考えてた?!』

ガンッ



『…痛い』




大声をあげると耐えかねたように横から肘鉄が飛んできた。ニヤニヤしながら妄想を膨らませている姿はなかなか異様だったらしい。気づくと、周りにいた人達が盛大にひいていた。



「ナマエ、頭でも打った?」



今、あなたが叩きましたが。



『ははは…、少し飲み過ぎたかも?』




今日はもう寝た方がいいよ、とさり気なく進言してくれた友は本当にいいやつだと思う。
うん、じゃあそうするね。
と少しふらふらしながら王宮に戻れば私はただの酔っ払いだ。実際はそんなに酔ってないけど。



あー…、残念。もう少し飲んでいたかったなあ。



王宮に入るとざわめきが遠のいて、物悲しくなった。



どうせなら、少し飲み直そうかな。



そう思いついたのは夜空がきれいだったから。
王宮の外廊から足をぶら下げて飲むお酒はきっと美味しい。

いつもなら、ジャーファル様に怒られそうなのでやらないけれど、今日は謝肉宴。王様が失態をおかさないように見張りをしているはずだ。


そう考えると私の頭は完全にお酒一色に染まった。私の給金のほとんどはお酒とグラスに消える。実は部屋の中はちょっとした酒蔵と化しているのだ。








どれを飲もうか、果実酒が一番飲みやすいと思うんだけど…
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