マギ1

□1.お前の気持ちなんざ知るかよ
1ページ/1ページ








今日もシンドリアはいい天気だ。

透き通るようにスカッと晴れた空と、遠くに浮かぶ雲のコントラストが美しい。

そして、私の気分もるんるんだ。

今日は初めて城下に出る。ここに来てから初めての休暇、初めての給料、そして初めての買い物!
ちょうどいいところに珍しいキャラバンがシンドリアに立ち寄ったらしく、そこものぞいてみたい。
食客としてここに滞在してるんだから仕方ないけど、来る日も来る日も文字の羅列に向き合っていたら気が滅入ってしまう。

いつもと違う砕けた服装で城門をくぐろうとすると、後ろから駆け足でやってくる何かを感じた。

…嫌な予感がする。



「ナマエ!」



やっぱり!
名前を呼んだのはあの人だ、八人将の1人で垂れ目で褐色の肌が艶やかな…。
来たばかりのころにちらっと見た剣術がかっこよかったので、ポロッとかっこいいなどと呟いてしまい、それ以来ことあるごとに捕まって剣術を見せられている。

正直、いい加減飽きた。
とりあえず、今日捕まったら買い物に行けない!

とっさに判断し、逃げだした。



「あっ、こら!」



後ろで焦った声がして、足音がさらに近づいてきた。しかし、私も必死である。持ち前の脚力でなんとか逃げられそうだ。



「そこの衛兵!そいつを止めろ!!」



『ひどい!』



職権乱用だ!

まあ、平文官より八人将が偉いわけで、衛兵さんは申し訳無さそうに私を止めた。
"すみません"とこっそり謝られてしまったので怒るに怒れず、私は後ろからやってくるシャルルカンを睨みつけた。
ちなみにあまりにもしつこいので、ほとんど敬意は抜け、今や呼び捨てである。



『シャルルカン!』



「逃げんなって」



八人将を呼び捨てするような人は珍しい、衛兵がすごく驚いていた。
たれ目の目尻がさらに下がった人懐っこそうな笑顔を引っさげて、シャルルカンはしっかりと私の腕を掴んだ。



『私は買い物に行きたいの!』



「お前の気持ちなんざ知らねえよ」



腕を振り放そうとブンブン振ってみたけど、全く効果はなかった。さすがと言うべきなんだろうか。



「俺が見せたいんだ。だから、見とけ」



往生際悪くそれでも逃げようとすると、小脇に抱えられた。行き着く先は何回連れ込まれたか分からない鍛練場。












ああ、さようなら。私の休日。
























あとがき
アンケートを見ると、いつの間にかシャルがランクインしててびっくりしました。誰かが連続投票したのかしら…、ちなみに連続投票は全然OKなのでどんどん投票しちゃってください
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ