マギ1

□2.たった今、俺が決めた
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今日もシンドリアはいい天気。







『ちょっと、腕痛いって!』




「知らねぇよ、黙ってろ」




これは絶対に痣ができると宣言できるような力で、私の腕は剣術馬鹿に捕まれていた。

王宮のはずれに向かっているその足は早く、官服でしかも特にこの頃書庫に籠もっていた私にはきつかった。
しかし、目の前の奴はこっちを振り向かないから、そんなこと気づいてないんだろう。







ことの発端は朝。
























シンドリアに食客として来てる私と同い年のナナスくんに、"今日の昼休みに鍛練場の裏に来てくれませんか?"と耳打ちされたのは、朝食の時だった。え、と振り返ると大人になりかけのかわいいようなはにかみを残して、彼は他の人に紛れてしまった。

いくら書物が恋人と影で噂される私だって、それがどういうことか分からないほど馬鹿じゃない。うっすら火照った頬を冷ましながら、昼までの時間いつも通り書物に埋もれて過ごした。



いつの間にやら、昼。
鐘の音でハッと気がつき慌てて食事を済ませ、人の捌けた鍛練場を目指した。
少し気恥ずかしいような気もしながら、とりあえず、自分のどこがいいのか、聞いてみたい一心で足に進めた。それで好印象だったらつきあってみようかなー、とか少し考えた。
約束の場所につくともうナナスくんはそこにいて、少し雑談をした。そして会話が途切れたときに彼は私に"ナマエさんが好きです"と照れくさそうに言った。私も話していて楽しかったからそれに応えようとしたら、急に後ろに肩をひかれた。

随分乱暴な力で後ろに倒れ込むと、たくましい胸板が背中にぶつかりぐいっと腰に褐色の腕が回された。
首筋に当たった鎖が思いの外冷たかった。




『こいつ、俺のだから』




ナナスくんと私がぽかんとしているのも構わず、それじゃ、とシャルルカンは私の腕を掴んでその場を去った。








そして、冒頭に至る。
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