マギ1
□2.たった今、俺が決めた
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人どころかほとんど物音さえしないところまで来て、やっとシャルルカンの足は止まった。
そこでやっと振り返った奴は肩で大きく息をしている私を見て多少たじろいだらしい、決まり悪そうに背を向ける。
一応、息を整える間をくれたと考えよう。
そして、とりあえずその背中に第一声。
『何言ってくれてんのよ!』
「…っ、お前が告白されてんのが悪いんだろ」
私の声の大きさにうるせーなぁ、とその褐色のきれいな指が耳を塞ぐ姿さえ、太陽の下では艶やかに光る肌がさまになっていて勝手に悔しがった。
『私の勝手でしょ!』
「お前、あいつのこと別に好きでもねえくせに」
『つきあってたら好きになるかもしれないじゃない!』
「は…、付き合うつもりだったのかよ」
背を向けたまま軽く笑っているシャルルカン。馬鹿にしたような言い方にカチンときた。
言わせておけば…!
『そう「なら俺と付き合えよ」』
何を血迷ったのか。
振り返った奴の瞳には楽しそうな色が浮かんでいる。
『…はぁ!?』
「好きになるかもしれねぇんだろ?」
『なに勝手に決めてんのよ!』
「たった今、俺が決めた」
目の奥をのぞき込まれるように言われて、その一言にだけ真剣味を感じた。そして、その表情にドクリと心臓が脈打つ。
なに反応してるんだ、自分の身体!
また腕を…さっきより優しく掴まれて耳元に口を寄せられる。
「っつーことで、…ナマエちゃん♪」
そしてそのまま耳を甘噛みされて、私の体中の筋肉が痙攣を起こした。
この人、なにしてんの!!
『き、気持ち悪い呼び方するな!』
勢いよく手を払うと案外あっさりとそれは解放された。
高いところにある翡翠の瞳を睨みつけると、すこぶる上機嫌に王宮に足を向け始めた。
「じゃ、よろしくなーナマエ」
『誰があんたなんかとよろしくするかー!!!』
真っ赤に熟れあがった頬で言っても説得力が無いことはきっと私自身が一番よく分かってた。