マギ1
□sleep soon
1ページ/2ページ
星が綺麗な夜だった。海洋生物も寝入っているらしく海面は穏やかで、船内もほとんどの人が眠り静かだった。そんな中で煌々と灯りが灯っている部屋が一つだけあった。
オレが長い間シンドリアを離れていたのは、建国以来だったかもしれない。
ぼんやりとそんなことを考えながら、馴染み深い主と先輩の話を聞き流していた。
「いやー、こんなにシンドリアを離れるのは久しぶりだったな」
「金属器さえ盗られなければ、ほんとはもっと早く帰れたはずなんですけどね」
「まあ全部戻ってきたじゃないか」
「…シンドリアに戻ればしばらく禁酒ですからね」
「ひどい!」
ジャーファルさんが禁酒令を予期させ、シンさんが自棄酒のようにグラスの中身を煽っていた。
それ以上飲めばさらにジャーファルさんの説教が続く気がしたので、とりあえず机上の酒類を全て回収した。
「マスルールまで!」
「もう寝た方がいいッス」
「そうです、あなた明日二日酔いの顔を国民に晒す気ですか!?」
けっきょくジャーファルさんの説教はしばらく続き、若干寝不足のまま朝方にシンドリアに着いた。
夜はまた酒宴になるだろうからそれまで少しでも寝ておこう、と港に着くとすぐに森に向かう。
久しぶりに踏んだシンドリアの土は足に馴染み、肺に吸い込んだ空気は体に融けるようで、オレの帰る場所はここなのだと改めて実感した。
いつもの木に背を預けると、微かにナマエの残り香があることに驚いた。
彼女はよくここに来るのか。
だからといってどうもしないので眠気に従い目を閉じると、どこか懐かしいパパゴラスたちが周りにやってくる気配がした。