マギ1

□3.キス一回で許してやる
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付き合えだのなんだのというやりとりがあったあと、明日からどうなることかと身構えていた私は大して変わらない毎日拍子抜けした。

一緒にどこかへ出掛けるわけでもないし、ご飯を食べるわけでもない。
本を読んでいるときに"剣術を見にこい"と私の意見なんかそっちのけで連れて行くのも、そのままだった。


よく分からないこの関係に密かに悩まされて、数日。
私は結論を出した。


シャルルカンのあれはただの遊びだ。



『そう、ただのおふざけ!』



改めて口に出すと、それは空気に溶けこんで私にそう思い込ませてくれた気がした。なんだか、悲しいなって思ったのはきっとあれだ。慣れないからかわれ方に疲れただけだ。
数回そうすると、完全に迷いは吹っ切れた。
吹っ切れたついでに少し外食でもしようかな。よし!と官服から私服に着替えて、夜のシンドリアに意気揚々と繰り出した。







































『〜♪』



王宮に戻ったのはすっかり真夜中。ついつい遅くなってしまったみたいで夜番の衛兵さんに女性なんですからと注意された。昼間から一転して静かになった廊下を少しふらふらしながら歩く。3階の部屋が随分遠く感じられた。
あー、早く寝たい。眠い。



「…おい」



『おわっ』
 


自分の部屋まで後数メートルというところで、いきなり肩を強くひかれた。私はそれに抗える訳もなく壁に背中を叩きつける。

チャリと金属の鳴る音が聞こえて、まずめんどくさい人物に捕まったと思った。というか八人将がこんなところにいていいのか。

何故かシャルルカンは怒りを滲ませた目で私を見下ろしていた。



「お前、今までどこ行ってたんだよ」



『…晩ごはん』



とりあえず悪いことをした覚えはないので翡翠の瞳をに睨み返すと、シャルルカンは更に不機嫌になったみたいだった。
何で怒ってるの?




「なんで俺をつれて行かねーんだよ!」



『え、』



「一応でもお前は女で俺と付き合ってるんだろーが!」



『…冗談じゃなかったの?』



どこか懇願するような怒り方に呆気にとられて、ポロッと言っては行けなさそーなことが口をついた。



「あ”?」



案の定、シャルルカンの睨み方が変わった。

ヤバい怖い!鍛練の時並みのオーラが出てる。



『すみません、何でもないです』



「は…、冗談だと思ってたのかよ」



謝っても時すでに遅し。若干殺気さえ見えるような気迫と、ギリッと更に肩の手に力が加えられて眉間にシワを寄せた。



『痛っ…』



「……」
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