マギ1

□3.キス一回で許してやる
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『……』



「……」





長い沈黙の間、不機嫌そうな翡翠の瞳から目を反らすことができなくて、ある意味泣きそうだった。



「…キス一回で許してやる」



『……………は!?』

 


突然ぐっと寄せられた男のくせに端正な顔に、恥ずかしくなる。
しかし、さっきの声色に怒りが含まれていなかったことにまず安心した。



「だからキス一回で許してやるっつってんだろ」



耳元で囁かれて、鼓動が速くなった。私何でドキドキしてんの!?



『いやいや訳分かんないし!』



「ったく、うるせぇなぁ」



バタバタと一応自由が許されていた手で目の前の身体を押し退けようとしたら、あっという間に手をからめ取られて万歳の状態で壁に縫いつけられた。
その合わさった掌ががっしりとしていて、あ、こいつも男だったんだ、とかこんな状況で思った。



「ナマエ」



『え、…んーーーーーーーー−−−−−!??』


名前を熱く呼ばれて体の芯がキュンとなった。
薄い唇が近づいた瞬間にギュッと目を瞑る。






私のファーストキス!とか、解放されたら抗議しようかとも思ったけど、合わされただけの唇は思いの外優しくて、私は結局何も言えなかった。
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