マギ1
□Do you know the Orange Day?
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ザバッ…
ここ数日そんなに日射しがきつくないのをいいことに王宮の屋根の上で昼寝をしていると、急に溺れた夢を見た。いきなり空から海が落ちてくる夢で、無理矢理に意識を戻して起き上がると、オレは夢の通りとりあえずずぶ濡れだった。どうやら水をかけられたらしい。
目を開けるとヤムライハさんの妹のナマエがにこにこと笑って立っていた。何でここに、と思ったが彼女も魔導師であることを思い出して、納得した。
澄んだ海色のふわふわとしたショートヘアーを風に舞わせながら、ナマエがオレの目の前に舞い降りる。ちなみにオレより2歳若くて、自称"お姉ちゃんの助手"らしい。
『マスルール、はい!』
ずぶ濡れになったオレに一言の謝罪もなくナマエが差し出したのは、色を塗ったかのようにオレンジ色をした見慣れない果物だった。嗅ぎなれない匂いだが毒物ではなさそうなので、一応手に取った。
「…なんスか」
『あげる!』
「はぁ…」
『あのね!』
"お姉ちゃんがシャルさんにあげるから、私もマスルールにあげるの!"
そう言うとナマエは照れくさそうに笑って、さらにもう一つその果物を取り出すと、オレの横に座り込んだ。そして、小さな口でそれにかぶりついた。
シャクッ
勢いよくかぶりついた割に、小さい口ではいくらかも減らなかった。よく分からないが、ナマエがおいしそうに嬉しそうに食べるので、オレもかじってみた。
ジャクッ
オレがかじるとその果物は3分の1くらいの大きさになった。
食べたことのなかったそれは少し酸味がきいていて寝起きで渇いたのどになめらかにしみて、おいしかった。もう一口でなくなるのが惜しいと思わせるくらいには。
『はい、おかわりどーぞ』
隣からタイミングを見計らったかのように差し出されたのは同じオレンジ色。よく見ると姉妹で揃えた杖の先にそれがいくつかぶら下がっていた。
「…どうも」
それを素直に受け取り、残っていた方を一口に放り込んで噛み締める。じゅわっと溢れた果汁はさっきより甘い気がした。
『これ市場で売ってたんだけどどこのかよく分かんないだよねー』
「…そっスか」
そのまま、雑談をしながら屋根で大人しく食べていると下に見える中庭に先輩とヤムライハさんがでてきてのけんかを始めてしまった。ナマエは慌ててそれを止めに行く。
いなくなった隣を見てから、2人の間に挟まれるナマエを見た。
…とりあえず先輩を一発殴りたい。
半渇きになった服は全く気にならなかった。
あとがき
すんません、ヤムさん妹設定をとりあえず取り込んでみようと頑張りました。ヤムさん妹の勝手なイメージではヤムさんほど肌の露出は激しくなくて、マスルールにこうやってえんえん絡んでいく子です。魔法は使えるけれど、もっぱらピスティと手を組んでいたずらに使っていたら良いと思います。はい。
ちなみにオレンジデーは4月14日で、カップルが愛を確かめ合う日だとか、オレンジ色の物を食べたり、送りあったりする日だそうです。だから、シャルとヤムライハさんのけんかは照れ隠しの行き過ぎだとおもってください。
そして、これも間に合わなかった。