マギ1

□隠し味にも使えます、
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すっかり外が暗くなって夕食時。
室内にはスパイシーなカレーの匂いが充満していた。



『マスルールほんと寒さに弱いよねー』


「…はぁ」


『せっかくのバレンタインなのにそれでいいのー?』


「まぁ」


『…シャルなんかチョコ目当てで大学来てたのに』


「外は寒いんで」


『…もういっそのこと冬眠したら?』


「できるもんならしたいッス」




二人で小さなこたつを囲んで私の特製カツカレーを食べる。
私の近所に住むようになった後輩の食生活が心配だとシャルルカンに相談され面倒をみるようになったのは、まだ桜が散る前だった。インスタント食品の残骸の山を見たのはあれが初めてで、あまりの酷さに初対面ながらその場に正座させて説教した。


あの頃に比べれば、マスルールにもある程度の生活力は身についたと思う、がどうやら私の料理に味をしめたらしく平日の晩ごはんは結局ずっと面倒みている。
なんだかんだで世話好きな私もついそれが嬉しくて甘やかしてしまうのだ。



「ナマエ先輩はチョコあげたんですか」


『…うん?友チョコやら義理チョコやらさんざんばらまいてきたよ』



意外な質問、多少はそういうの気になるんだ。その辺はかわいいなぁ。ついつい口角を上げながらちゃかした。

あれだけチョコ溶かしたの久しぶりだわー。

ふぅ、と自分の右肩を揉んで疲労をアピールすると、カレーを食べて少し威圧感が戻ってきたマスルールがムスッとした表情で見下ろしていた。



「オレにはないんですか」


『え、ほしかったの?!』



これには冗談抜きに驚いた。まさかまさかの隠れ甘党か?!いや、でも、そんなことはなかったはずだ。レポートの徹夜明けに板チョコをかっ食らっていたのは見たことあるけれど。







……あー、なんという、嬉しいような悲しいような誤算。
こんなことならあげたらよかった。



しかし、そうは思っても後の祭り。
とりあえず、今は目の前の後輩を宥めよう。



『ごめん、来年はマスルールのも作るから』



だから、今年はこれで我慢して?


カレーを指さした後、意識して眉尻を下げて手を合わせる。ここ数ヶ月で学んだことの1つ。どうやら彼はこの表情に弱い。

案の定しばらく逡巡したあと「…ッス」と一応納得してくれたらしい返答が返ってきた。

落ち着いたところで自分の言動が照れくさくなったのか、マスルールが絶対零度の台所におかわりを取りに行く。


返ってきた彼の皿には、カレーが山盛り。



それを見て、少し視線をそらした。


そのカレーにはマスルールに作ったチョコが溶かしてあったりするのだ。













(渡す勇気はなかったけど、食べてほしかったんだ)


















あとがき
一応、バレンタイン夢です
全然色気無いですけども!!
滑り込みです、ええ、滑り込みですとも。でもギリギリ2/14でした。
シャルルカンはヤムライハと同棲してて、ヤムライハに散々妬かれてたらいい!なんて、シャルヤムの妄想がひろがってました。
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