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□02.追いかける
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私にはどうやら見えてはいけないものが、見えてるらしい。
それは大抵白い小鳥の姿で、道に迷ったり、行き先を決めかねたりしていると彼らは現れて、私を導いてくれるのだ。
しかし、今回は違った。
私は迷っていなかったし、決めあぐねてもいなかった。山を歩いていたら彼らはいきなり現れて私を獣道へ誘ったのだ。
そして、たどり着いたのは静かな庭園。
随分長い間歩いて、朱かった空はすっかり黒く塗りつぶされてしまっていた。
周りにいた白い鳥たちは道案内を終えたと言わんばかりに、だんだん見えなくなってしまう。
少し寂しいけれど『ありがとう』と囁いて鳥たちに微笑んだ。
月の光に浮かび上がっている庭園は手が行き届いていて、明らかに誰かの所有物だった。
しかも、けっこう身分が高めの。
小さな橋がかかった池には見目鮮やかな大きな魚が、足元は一定の長さに刈られた柔らかい青草、木に実はなっているけれどもその根元に熟れて潰れた果実は見当たらない。
やっぱりここにはいってはいけなかったのではと危惧していると、前ぶれなく誰かに足を払われて湿った地面に背中と腰を強かに打ちつけた。
「君、どこから入ってきたわけぇ?」
頭上からかけられたのは不機嫌な声。
意外と高い声に疑問を持ってその姿を見上げた。
相手の顔は見えなかったが、喉元に突きつけられた黒い刃が見えて思わず唾を飲み込む。
下から見上げる分にしてもだいぶ小柄な人物な気もするが、言動等々から推測すると彼はここの所有者らしい。
少年の白い肌、淡い紅の艶やかな髪、そして突きつけられている黒い刃。
総てが青白い月の光に映えて、美しかった。
きれいじゃなくて、美しい。
こんな絵のような中でならば、その刀に貫かれたいと惑わせるような妖しげな雰囲気。
ただ残念なことに彼の表情が見えない。今夜は月が明るいから影が濃いのだ。
「ねぇ、答えなよ」
彼は私に問いかけているはずなのに、そう聞こえない。
打ちつけて痛い腰とか、さらに痛そうな刃を目の前に私の脳内は処理しきれなくなっていた。
あわあわと唇を戦慄かせてやっと一言。
『し、白い鳥を追いかけてきたの…』
そうしたらあなたに会えました。
はい、すみません。かれこれ半年経ってます。ですが、地味に続けてます。
この夢は続き物にしようかどうか迷って、結局こっちで消費しちゃいました。だから、本当はもう少し細々した設定があります。けどあまりにもごてごてしたらやだなぁ、と思ってやめました。
でもやっぱり消化不良なので、後で何かと関連させるかもしれないです。
ところで紅覇の口調ってどんなでしたっけ( ;∀;)