光の君
□Aハカリゴト
1ページ/3ページ
12月24日は花寺学院とリリアン女学園の終業式だった。クリスマスやお正月を控えて、みんなが浮足立っているように見える。
終業式では生徒会長の挨拶があり、柏木先輩が檀上で立派に役目を果たしている。
祐麒はそれを複雑な思いでそれを眺めていた。
(柏木先輩は格好いいし頭もいい。憧れの存在だ。でも、分からない。どうしてあんな事を俺にしたのか・・・)
あの日以来、祐麒は生徒会室には行っていない。
終業式が終わり、教室で簡単なホームルームが済むと今日はもう帰るだけだった。
校門に差し掛かった時、校門の外に黒い車が止まっているのに気付いた。
誰かの迎えかなと思って横を通りすぎると名前を呼ばれたような気がして立ち止まる。
「ユキチ!」
今度は間違いなく聞こえた。それもよく知ってる声で、祐麒が一番会いたくなかった人のものだった。
振り返るとさっきの車の後部座席の窓が開いて柏木先輩がにこやかに手を振っていた。
「今日のパーティー来るんだろう?乗れよ」
「結構です。」
「祐巳ちゃんは先に着いた頃かな」
「・・・・」
逃げ場なしか・・リリアン学園の方にも迎えの車が待っているんだろう。
祐麒は無言で車に乗り込んだ。
「卑怯ですね。」
「親切だと言って欲しかったな」
そのまま無言で窓の外を眺めながらしばらく走ると、20分程で着いた。
時代劇の中に出てくる奉行所のような立派な門の前で車を降りる。
(相変わらずすごい家だな・・)
「祐巳はもう来ているんですか?」
「迎えに行かせた車がまだ帰ってないから、まだ来てないようだ。」
祐巳は山百合会の集まりで遅くなっているのかな・・・。