小ネタ集
□モコ族特別作品『モコモ黄門』
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オルフェウス時代劇・モコモ黄門
主題歌:ああ人生に涙あり2015
歌:加藤智子、阿比留李帆、山田澪花、後藤理沙子、水埜帆乃香、市野成美、大矢真那
配役
モコ右衛門:加藤智子
リホさん:阿比留李帆
レイさん:山田澪花
風車のリサ七:後藤理沙子
かげろうお帆乃:水埜帆乃香
柘植の飛成:市野成美
うっかり真兵衛:大矢真那
町娘・おつう:岩永亞美(友情出演)
旗本A・山田七十郎:山田菜々(友情出演)
旗本B・大場皆吉:大場美奈(友情出演)
旗本C・古川愛乃輔:古川愛李(友情出演)
尾張藩筆頭家老・臼井織部:オルフェウス
尾張藩次席家老・高柳明ノ丞:高柳明音(友情出演)
丁稚・あさ吉:犬塚あさな(友情出演)
廻船問屋・美濃屋るみ左右衛門:加藤るみ(友情出演)
長唄の師匠・お安:石田安奈(友情出演)
易者・内山命庵:内山命(友情出演)
若侍・磯原杏志郎:磯原杏華(友情出演)
尾張藩剣術指南役・斉藤真木之介:斉藤真木子(友情出演)
門番・柴田阿弥太:柴田阿弥(友情出演)
尾張藩与力・梅本円心:梅本まどか(友情出演)
尾張藩同心・小林大膳:小林亜実(友情出演)
尾張藩同心・高木左馬助:高木由麻奈(友情出演)
尾張藩同心・竹内雅楽頭:竹内舞(友情出演)
尾張藩同心・都築里太郎:都築里佳(友情出演)
庄内藩主・酒井忠萌:酒井萌衣(友情出演)
木本観音菩薩:木本花音(友情出演)
若者・山下寧丸:山下ゆかり(友情出演)
町娘・おみず:山田みずほ(友情出演)
尾張藩主・徳川玲奈友:松井玲奈(特別出演)
時は五代将軍徳川綱吉の治世。
世はまさしく天下太平、街は活気にあふれている。
ここ、御三家が一角である尾張の地も、行き交う人々でごった返している。
そんな中を、杖をついて歩いている白髭の老人。
後ろには二人の若い男と、団子をムシャムシャと頬張る陽気そうな男がいる。
「真兵衛(まさべえ)さん、いつまで団子を食べているのですか?」
若い男のうち、いかにも堅物そうな方が問いかけると、
「レイさんも一本いかがです?」
真兵衛と呼ばれた男が、腰から提げた竹皮の包みを開くと、中から団子を一本出して、レイさんの方に差し出す。
「結構です!」
きっぱりと断るレイさんに、
「そうですか、ならばもう一本いただきます。」
その団子も口に運ぼうとする真兵衛。
「......おっと、レイさんがいらないと言うなら、私がいただきましょう!」
真兵衛の手から団子を奪い取り、食べるもう一人の男。
「そうそう、リホさんに食べるかどうか聞くのを忘れてましたな。
「こいつはうっかりだ」!」
頭を掻く真兵衛。
「リホさん、あなたまで何をしているんです!
私たちはあくまで旅の道中なのですよ!!
いついかなる時に危険が訪れるか分からないのだから、今少し緊張感というものを......。」
隣にいるリホさんに説教を始めるレイさん。
「まぁまぁ、そう固いことを言わずに。
四六時中真面目過ぎるのも考え物ですよ。」
自分が言われているにも関わらず、レイさんをなだめるリホさん。
「何を言っているんです!?
そういうあなたこそ、少しは真剣になりなさい!」
「......レイさん、そいつは聞き捨てなりませんな。
私は十分真剣ではありませんか!
時にはふざけることもありますが、それも「遊び心」のうちです。
それを言うなら、レイさんの方こそ少しは遊び心もお持ちになったらいかがですか......、私を見習って。」
その瞬間、レイさんの表情が強張る。
「調子に乗るのも大概になさい!
確かに剣の腕ではリホさんに学ぶことも多いし、決めるときは決めるあなたに一目置く部分もあります。
しかし、だからといってあなたの適当さを見習うつもりは一切ありません!!」
「何ですと!?
今度ばかりは私も堪忍袋の緒が切れました!
お主のようなどうしようもない石頭は、岩にでも当たって砕けてしまえばよいのに!!」
「言いましたね!?
そちらがそう言うのなら、私は貴様の軟弱な根性を両端から引っ張って、ぷっつりとねじ切ってやるわ!!」
どんどん過熱する二人の言い争いに、
「ご両人、落ち着いてください!」
オロオロしだす真兵衛。
その時、
「リホさん、レイさん、もうその辺になさい。」
穏やかでありながら、それでいて威厳ある声で止める老人。
「ご老公......。」
ご老公と呼ばれた老人はさらに続ける。
「私たちが旅を続ける上で、レイさんの堅実さと、リホさんの柔軟さは、二つながら欠くべからざるものじゃ。
互いの強みを合わせ、互いの弱さを補い合う、それが旅というものではないかな?」
ご老公の言葉に感じ入る一行。
「さぁ、わだかまりはここで捨てて、新たな気持ちで進もうではないか。」
ご老公の言葉をきっかけに、一行は晴れやかな表情で歩き出す......。
その頃、とある茶店の店先では、床几に腰掛ける、やたらと華美な着物をわざとらしく着崩した若い武士らしき三人組がいた。
「お待たせいたしました。
おはぎとお茶でございます。」
店の中から、盆に湯呑みとおはぎを載せて一人の娘が出てくる。
男たちのうち一人が湯呑みを手に取ると、
「......熱っ!」
突然湯呑みをひっくり返し、自分の着物に茶をこぼす。
「おい、どうなってるんや!?
ここの店は客に火傷するような茶を出すんか!?」
西国の生まれらしき話し方で凄む男。
その声に、先ほどの娘が慌てて飛び出してくる。
彼女の目の前で、隣の男が大げさに茶がかかった男を心配する。
「大丈夫か、山田?
あ〜あ、せっかく仕立てた友禅の最高級品が台無しではないか。
......おい、どうしてくれる?」
その男に睨み付けられ、後ずさる娘。
「そ、それは......。」「大場、あまりお嬢さんを困らせるな。」
もう一人の赤い着物の男が温和な笑顔を浮かべながら止めに入る。
「はい。
おいお前、運が良かったな。」
「ほんまや。
古川様は「慈悲深い」お方やからな。」
大人しく引き下がる大場と山田。
古川は娘の方を向く。
「そなた、名前は?」
「えっ......、おつうです。」
「おつうちゃんか、良い名前だ。
まずは、怖い思いをさせてすまなかった。」
笑顔のまま頭を下げる古川。
「......そ、そんな、頭をお上げください。」
当惑するおつう。
「我らも名のある旗本の子息、あまりに騒ぎを大きくするのは私たちとしても本意ではない。
ここは穏便に済ませたいのだ。
構わないかな?」
古川の言葉に頷くおつう。
「分かってくれて嬉しいよ。
それでは、「誠意」を見せてくれるね?」
古川はいきなりおつうの腕を掴む。
「な、何をなさるのですか、おやめください......。」
振りほどこうとするおつうだが、古川の力はますます強くなる。
この状況でも笑顔を崩さない古川。
その時おつうは気づいた、古川の表情は笑顔であったが、その目はギラギラと初めから欲深そうに輝いていたことに......。
「約束しよう、悪いようにはせぬ......。」
その物欲しげな視線に萎縮するおつう。
その時、
ビシュッ!
どこからともなく飛んできた風車が古川の顔をかすめて、茶店の柱に突き刺さる。
ツーッ......。
古川の頬を一筋の血が流れ落ちる。
それを手でぬぐって周囲を見回す古川。
そこに、一人の男が現れる。
「いい加減その汚ぇ手を離せ。
さもなけりゃ、お前らのうちの誰かが後ろの柱と同じ目に遭うことになるぜ?」
手には風車を持っている男。
先ほどの風車も、彼が投げたようだ。
その男の醸し出す雰囲気に身じろぐ山田と大場。
「ふっふっふ、町人風情がよくも私の顔に傷を付けてくれたな。
このようなことをして、ただで済むとは思うなよ?」
なおも余裕を見せる古川。
「ふん、旗本の子息が聞いて呆れるぜ。
こんなチンピラまがいのことまでしやがって......。」
吐き捨てた男の言葉に、
「貴様、私の顔に傷を付けたばかりか、チンピラ呼ばわりまでするのか!?
今に見ていろ、私の父上にかかれば、貴様のような町人の一人や二人簡単に潰せるのだか......。」
バキッ!
古川は怒りをあらわにするが、男に殴られる。
「殴ったな!?
もう許さん、絶対に父上に言って潰してや」
バキッ!!
「二度も殴るとは許せん、父上にも殴られたことなどないのに!」「甘ったれんな!」
文句を垂れる古川を一喝する男。
「旗本と言えば幕府のために将軍のおそばにお仕えする重要なお役目だろ!?
そんなお役目を将来務めようって奴が、こんな所で町娘に難癖付けて自分の思い通りにしようとするなんて、恥ずかしくねぇのか!?
だいたい、あんたのお父上がどれだけ偉いかは知らねぇが、こんな町人一人、お父上の力を借りなけりゃなんとかすることもできねぇのか?」
すると、男の言葉を聞いた古川は、
「よく分かった。
そこまで貴様が言うのなら、望み通り私が手ずから冥土に送ってくれるわ!」
刀を抜く。
「古川様が剣を抜いた!?」
「......おいお前、何者か知らんけど、とんでもないことしてくれたな!?
若くして「彗星紅蓮流・免許皆伝」を認められ、通常の三倍早い太刀捌きを誇る古川様を本気にさせるなんて、どうなっても知らんぞ!」
本気で恐れおののく大場と山田。
それを尻目に、お互いに構えたままで茶店の前でにらみ合う男と古川。
その様子を固唾をのんで見守る大場、山田、そしておつう。
その沈黙を破ったのは、
キンッ!
男の投げた風車を古川の刀が弾く音だった。
「ふっ、当たらなければどうと言うことはないわ。」
「やるな......。」
呟いた男は、矢継ぎ早に風車を投げる。
しかし、古川は一本残らず刀で弾き返し続ける。
「ははは、無駄無駄無駄無駄ァ!」
余裕そうな表情で風車を受け流し続ける古川であったが、
ピシッ!
「なにっ!?」
風車を受け続けた刀が折れてしまう。
「まさか、初めから一点だけを狙って......?」
そう、男は古川が弾き返す位置を考えた上ですべての風車を投げていたのだ。
「あんたの腕が確かで助かったよ。
さすがは免許皆伝の腕前だ。
正確無比な太刀捌きで、俺の狙った通りに刀を振るってくれるんだから、楽で仕方がなかったぜ。
これで口だけのへっぽこだったらどうしようかって内心ヒヤヒヤしてたんだが、取り越し苦労だったな。」
と言ってニヤリと笑う男に、
「くっ......、覚えていろ!」
と吐き捨てて、古川は剣先を拾って逃げていく。
大場と古川も後を追う。
「これを「若さ故の過ち」で片付けねぇで、自分たちのやったことを認めて真っ正面から向き合ってくれりゃあいいけどな。」
彼ら三人の背中に向かって呟く男。
「危ないところを助けていただきありがとうございました。」
深く頭を下げるおつう。
「いやいや、奴らを見てたら腹が立っただけだから、礼には及ばねぇよ。」
そう言いながら立ち去ろうとする男。
「お待ち下さい。
せめてお名前だけでも......。」
「名乗るほどのもんじゃあねぇよ。」
こう言い残し、男は颯爽と姿を消す。