小ネタ集

□16thシングル発売記念企画「星に願いを 〜ポスト射手座選抜総選挙!?〜」
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星に願いを 〜ポスト射手座選抜総選挙!?〜


無限に広がる大宇宙。
古(いにしえ)の人々はこの夜空を見上げ、星々の瞬きに想いを馳せた。
さて、その空の向こうには、いかなる世界が広がっているのだろう?
今から、それを少しのぞいてみよう。


(そのナレーションと共に、あなたの視点はあなたの身体を離れ、空の向こうに猛スピードで吸い込まれていく。
すると、中華風の衣装を着た女性が、「機織り機」(というより、金色の全身タイツを着た女性?)に向かって作業している。)

「しゃわこ〜ん、しゃわこ〜ん......。」

「あ〜あ、彦星様はいつになったら来るのかな〜?」

「(歌い出す機織り機)♪はたお〜り はたお〜り 楽し〜い はたお〜り 私は栄の はたお〜り久〜美......。」

......失礼、覗く場所を間違えてしまったようだ。
今度こそ、気を取り直して......。

(再び、空を駆け抜けるあなたの視点。)

ここは天上の世界。
あなた方の知る、「星座」になっている様々な生物の住むところである。
その中心地に設けられた巨大な円卓。
この円卓の12の座席のうちのいくつかは様々な格好の人物(?)により埋められている。
この円卓は、天上の世界の中でも最上位に君臨する、「黄道十二星座」(ゾディアック)のメンバーにしか座ることが許されていない。
その中の、甲殻類を思わせる、深紅の装束を纏い、長い髪を一本の三つ編みにして後ろに垂らした女性が立ち上がる。

「亜香里の担当するこの1ヶ月、なんとか無事に終えることができました。
愛李さん、来月もしっかりお願いしますね。」

今話しているのがゾディアックの一員、スコーピオンの亜香里である。
すると、彼女の隣で立っていた(なにしろ、下半身が馬であり、椅子には座れない)背中に弓を背負った人物(いわゆるケンタウルス)がゆっくりと口を開く。

「そのことなんだけど......。」

そこからその人物、サジタリウスの愛李が語り始めた内容に驚きを隠せないゾディアックのメンバーたち。


その数日後、愛李は天上に住む者たちを集めた。
その傍らには、全身から煌びやかな輝きを放ち、背中には翼を持つ、フェニックスの明音が寄り添っている。
ゾディアックの一角である愛李と、その無二の親友である明音が並び立つ姿に、集まった者たちの間にも張り詰めた空気が流れる。
そして、話し始める愛李。

「みんな、集まってくれてありがとう。
単刀直入に言うね、私はサジタリウスの座を降りることにしました。」

ざわめく一同。

「私もサジタリウスとしてゾディアックに加わってもう600年(注:人間界の時間換算)、気づけばゾディアックの中でも最年長になってたし、そろそろ若い世代に席を譲って、第一線から退くべき時が来たと思ったんだよね。
それで、後継者なんだけど......。」

愛李のその言葉に身を乗り出す一同。

「サジタリウスは、私と同じ「ケンタウルス族」から選ぶのが通例だよね。
だけど、そういう氏素性にこだわるよりは、出自に関係なくやる気と実力のある人材を探した方が長い目で見ればこの世界のためになるんじゃないかと思うんだ。
だから......。」

と言いながら後ろ手に持っていた巻紙を広げる愛李。

「「ポスト射手座選抜総選挙」を開催します!」

どよめく一同。

「それじゃ、これから詳しい説め」「待って、ひとつだけ。」

言葉を続けようとする愛李だが、それを遮る明音。

「あんたたち、これがどういうことか分かってる?
こんな風に、チャンスが向こうから転がり込んでくるなんてめったにないんだよ!?
何としてでもゾディアックに入ってやるっていう気合い、見せてよね!
そうでなければ、勇退する愛李に申し訳が立たないでしょ!?」

熱く語る明音に、

「ちょっと明音、いくらなんでも暑苦しすぎ。
そんなんじゃ、若手が圧倒されて出てこれなくなるよ〜。」

「何言ってんの!
こんなぐらいでビビってたらゾディアックなんか務まるわけないんだから!!
だいたい、あたしは愛李が退くなら、それなりに実力のある後任を見つけなきゃいけないと思って......。」「だ〜か〜ら、いちいち暑苦しいんだって!
そんなに燃えまくってたら、自分の炎で「焼き鳥」になっちゃうぞ〜?」

「はぁっ!?
フェニックスにとって、焼き鳥がどれだけ傷つく言葉か分かって言ってるの!?
こうなったら、あんたをこんがり美味しい「馬肉ロースト」にしてやる!!」

「へ〜、言ってくれるじゃん。
誇り高きケンタウルス族をただの馬呼ばわりして、ただで済むと思ってるの?
こうなりゃ、ここで決着(ケリ)つけるしかないよね〜!
言っとくけど、飛んで逃げたところで、この弓さえあれば、「バカ鳥」の一匹や二匹簡単に落とせるから。」

「言ったな〜!」

どんどんヒートアップする両者の言い争い。
その時、全身毛皮でできた装束のフードにつけられたたてがみが一際目を引く、堂々たる雰囲気を放つ人物が両者の襟首を掴んで、端に運んでいく。

「二人とも、少しは落ち着きなさい。」

「すいませんでした、玲奈さん。」

運ばれながら素直に謝る明音と、

「力強いだけでなく、何より美しい。
さすがは玲奈さん......。」

襟首を持たれたまま、なぜか恍惚とした表情を浮かべる愛李。
この二人を運んでいるのはレオの玲奈、彼女もまたゾディアックの一員である。(女性にも関わらず装束にたてがみがあるのは、この世界の住人が持つ力はあくまで概念的なものだからである。)
この光景に、見ている者たちもあ然となる。
さて、愛李たちに代わり、今度は、やたらと直線を取り入れたデザインの装束をかっちりと着て、真四角のレンズが入った眼鏡をかけた女性と、長い黒髪が美しい長身の女性が登場する。
まずは眼鏡の女性が話し出す。

「それでは、これよりポスト射手座選抜総選挙の詳細を説明します。
私は、今回の選挙管理委員長を仰せつかりました、ノルマ(定規座)の澪花と申します。」

自他ともに認める「規則の番人」の澪花の起用は、居並ぶ者たちの誰にとっても納得の人選であった。

「そして、私は監査役を務めます、ヴァルゴの帆乃香です。」

隣の女性も一礼する。
ゾディアックの中でも、法と正義を司る彼女は監査役に適任だろう。
続いて、澪花が説明を開始する。

「まずは、立候補の条件について説明します。
とは言っても、愛李さんの考えを十二分に反映し、特に条件は設けないこととします。
やる気がある方は、進んで立候補の意志を私たちに伝えて下さい。」

そこから、今度は帆乃香が続ける。

「さて、投票に関してですが、今回の選挙は、ゾディアックのメンバーが各一票投票権を持ち、さらに、皆さんの「事前投票」による得票数一位の候補者に一票が与えられます。
ただし、監査役の私は中立の立場から監査を行うため投票権を行使せず、さらに「ライブラ」は現在空位となっているため、全部で11票が投じられることになります。」

と言う帆乃香の手には、黄金の天秤が乗っている。
これこそ、ライブラの力の象徴であり、その力を手にするに相応しい者が現れるまで彼女が管理しているのだ。

「また、万が一、同率一位で並ぶ候補者が出た場合は、現在のサジタリウスである愛李さんに判断を委ねることとします。

説明は以上ですが、何か質問は?」

と言って言葉を切り、周囲を見回す帆乃香。

「ないようですので、これで説明を終わります。」

こう言って退出する帆乃香と澪花。
すると、今度は、炎をモチーフとした装束の女性と、緑の爬虫類らしきイメージの姿をした女性が現れる。
まずは炎を思わせる装束の方の女性が、

「皆さん、こんにちは〜!
緊急特別番組「ポスト射手座選抜総選挙への道」の進行を担当することになりました、アラ(祭壇座)の香織と......、」

と言いながら隣の女性に話を振ると、振られた女性はなぜか涙声で話し始める。

「元・AKB48の、前田敦子です。」「......って、違うでしょ!
自己紹介だから「ものまね」はナシで!!」

香織に突っ込まれ、

「カメレオンの美紀です!」

挨拶する美紀。

「これから、結果の発表まで、随時私たちが様々な情報をお伝えしていきます!」

などと会話している二人を見ながら、一際目を輝かせている一人の少女。
纏う装束は先ほど玲奈の着ていたレオのものにどことなく似ているがたてがみはない。

「ついに、私にもチャンスが回ってきたんだ!
こうしちゃいられない、早く立候補の準備しなきゃ!!」

と呟くと、人ごみをかき分けて走り出す。

「師匠、師匠〜!」

そのまましばらく走り、一軒の屋敷に飛び込む少女。

「......杏実、私はあんたを弟子にした覚えはないし、だいたい、いつも言ってるけど、レオとライオネットって特に関係ないからね。」

中にいた玲奈は冷静に言う。

「いいじゃないですか、師匠が獅子座で私が仔獅子座、言ってみれば親子みたいなものでしょ?」

無邪気な笑顔を見せる杏実。

「だから師匠って呼ぶなって何度言ったら......。
それに親子はやめてよ、あくまで6つしか離れてないし。

......って言うか、何の用?」

「私、今回の総選挙に立候補します!」

その瞬間、玲奈の視線がスッと険しくなる。

「分かってるよね?
ゾディアックに入るってことはそんなに甘いものじゃない。
ただ単に目立つ立場になるという以上に、その地位には責任が伴うの。
そして、いざという時には、この世界を背負って目の前の危機に対処しなきゃいけないこともある。
その覚悟はできてる?

それに、投票はあくまで中立的立場で行われるから、いくら知ってる相手でも私情を挟む訳にはいかない。
自分に入れてほしいなんて私に頼んだところでムダだよ?」

すると、

「やだな〜、そんなの分かってますよ!
あくまで私は、立候補を決意したことを師匠に報告したかっただけです。

正々堂々選挙を闘いますから安心してください!!
ただ、師匠が思わず私に一票入れたくなるように、投票までずっと努力は続けるつもりですけどね?」

ニヤリと笑う杏実。

「それじゃ、ぼちぼち立候補しに行ってきます!
こういうのは早めがいいって言いますよね、確か「電話急げ」、......でしたっけ?」

「それを言うなら「善は急げ」。
しっかりしなさい!」

玲奈の突っ込みに、照れ笑いしながら再び走っていく杏実。
その背中を見つめる玲奈の目には、口ではそっけないことを言いながらも、心の底では杏実のことを案じているということがよく現れていた。

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