有里湊幸せ計画

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4月。月光館学園に転入してきた有里 湊は、今我が身に 何が起こっているのかを理解しようと頭をフル回転させて いた。

何せたった今自己紹介を終えて席に着こうとした瞬間、いきなり少女に「王子がいた…!」などと叫ばれ抱きつかれ ているからである。

ざわつく教室、小柄な為に湊の胸の辺りに頬ずりする変態少女。ちなみに本編のヒロインにあたる。


「ちょっと名無しさん!?何やってんの!」


ゆかりの声によって我に返った湊は、既に内心どうでもいいと思いつつも、抱きついている少女に「…苦しい」とだけ告げる。

「こ、声も素敵だ…!私名字名無しさんと申します!結婚を前提にお付き合い……ぐはぁ!」

「はーい名字さん告白は後にして席に着いてちょうだい。じゃないともう一発殴るわよー」


いつの間にか名無しさんという少女の背後にいた担任の 鳥海によって、ハグという初対面にしてとんでもない行為から解放される湊。酸素を取り入れ、漸く席に着こうとしたのも束の間。

「先生私王子……有里くんの隣がいいでーす!順平くん邪魔、そこを私に譲れ」

「何でだよ!つーかシャーペン向けんなって名無しさんッチ!……あ、」

「いいから早くぎゃあああ!先生ドメスティックバイオレンス反対ー!!」

「あんまり先生を怒らせない方がいいわよー?」

「すみませんでしたぁぁあ!」


転入早々から繰り広げられる濃いやりとりに、湊は小さく息を吐いた。なんだかとんでもないクラスに来てしまった かもしれないと。


「…どうでもいいか」


小さな呟きは、名無しさんの悲鳴にかき消された。


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