有里湊幸せ計画
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転入して三日目。湊は教室でぐったりとしていた。
というのも無理はない。何せ転入初日にクラスメイトから 「王子だ!」などといきなり抱きつかれ、挙げ句の果てに告白なんぞされていたからだ。
最初はどうでもいい、どうせ冗談だろうと大して気にも留めていなかったのだが。
「あ、いたいた!有里くーん!」
…来た、と思わず湊は呟く。それもそのはず、突進しかねない勢いで湊の側にやってきたのは、初日に台風を巻き起 こした張本人・名無しさん。
彼女の言ったことは嘘ではなく本気だったらしい。あれから登校から下校まで湊にアタックをしているのがいい証拠だ。
「…何」
「何、じゃないよ!探したんだよー」
はあ、とあからさまな溜め息が漏れる。四六時中付きまとわれていれば、誰でもうんざりするだろう。
けれど名無しさんは大して気にも留めず、頬杖をついてニコニコと笑うだけ。
「名無しさん、いい加減にしなさいよ。有里くん困ってるじゃない」
「コイツいつも一直線ってかなんつーかさ。悪気はねーんだよ」
そんなときに現れたのは、ゆかりと順平。今の湊にとっては救いの手だ。
「何でさー。私は有里くんが好きだから、」
「だからそういうの止めなさいって言ってんの」
「ね、何かお話しようよ有里くん」
「…僕は話すことなんてない。君に興味ないし」
「ちょ、湊!お前流石にそれは言い過ぎだって!」
言ってすぐにハッとなる。いくら何でも今のは言い過ぎた。けれど、苛立ちを抑えることは難しい。
「……そっか、私に興味あるわけないよね」
さっきまで笑顔だった顔はみるみるうちに陰を落としていく。しまった、そう思ったのも束の間で。
「じゃあ私に興味持ってもらうように努力する!まずはえっと…簡単なプロフィールからね!」
「……は?」
「ちょ、名無しさんッチ?」
「身長は143センチで体重は…秘密!血液型はO型でそれから…」
それから延々とプロフィールを聞かされた湊は小さくこう呟いた。
「……殴っていい?」
「いや、それはマズいって!」
「落ち着いて有里くん!」
ぷるぷると震える拳は、ゆかりと順平によって止められた。
(まだまだあるよ!)
(……もういいからちょっと黙って)