有里湊幸せ計画
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4月18日。ペルソナ覚醒のショックで倒れ入院していた湊は、約10日ぶりに学校へと登校した。
職員室にて担任の鳥海と会話をして教室へ戻ろうとドアを開ければ。
「あ、あああ有里くん…!」
存在を完全に忘れていた名無しさんの姿が目に飛び込ん できた。あまりにも突然過ぎたため小さく肩を震わせたが、いつものようにポーカーフェイスで「…おはよう」とだけ口を開いた。
「お、おは、おはようじゃないよ有里くん!ずっと学校休んでたから心配したんだよ…!」
いつものようなあの笑顔はなく、大きな目からは今にも涙が零れてきそうだ。ふるふると小さく肩も震えている。
なんか小動物みたい。思わず小さく笑いそうになってしまったが、ぐっとそれを飲み込んで「体調悪かっただけ」と告げた。
「も、もう大丈夫なの?」
「うん」
「よかった…」
「え…名字さん!?」
ふっと糸が切れたようにその場にへたり込む名無しさんに、流石の湊も驚いた。慌てて同じようにしゃがみ込め ば、「有里くんが元気になって、本当によかった」とへにゃりと笑う名無しさん。
瞬間、湊の胸に爆弾が投下された。いやいやないない、 だってまだ会って四日目くらいだしとブンブン頭を振って、小さく深呼吸する。
「…有里くん?」
「いや、何でもない」
そろそろ教室行こうか。そう言って手を差し伸べれば、さっきまでのしおらしい彼女はどこへやら。
「うっはーん!あ、あああ有里くんと手繋げ……あれ?」
「……やっぱり別々に行こうか」
「えぇぇぇ!?」
名無しさん覚醒モードにより甘い空気は一瞬にして弾け飛んだ。
あのときめきは一時の気の迷いだろう。そう湊は心の中で呟いて、久しぶりの教室のドアに手をかけた。