有里湊幸せ計画

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「名無しさんがタルタロスに迷い込んだだと!?」

寮にて驚きの声をあげたのは、現在行方不明である名無しさんの知り合いだという真田。

あれから湊たちは名無しさんの行方を知っている人物がいないか聞き回り、今に至る。

「どういうことだ」

今にも湊に掴みかかりそうな勢いの真田を押さえつつ、側にいた美鶴が疑問を口にした。

「実は昨日から名無しさんと連絡が取れなくて…」

湊の代わりに口を開いたゆかりが順を追って事の経過を説明していく。

「それで放課後、三人で聞き込んだら…」

「クラスメイトに一人いたんスよ、名無しさんッチ見かけた奴」

「それが一体タルタロスとどう関係があるんだ」

「学校の前、だそうです」

「…何?」

静かに呟いた湊の言葉に美鶴が素 早く反応した。

「夜に名字さんが学校の中に入っていくのを見たそうです」

「だからといって迷い込んだと決まった訳じゃないだろう!」

「でも、可能性はゼロじゃないですよ」

何よりエリザベスからの連絡が気になる。心の中で呟いて、戸惑っている様子の真田に視線を向けた。

「もしもの事があってからじゃ遅いんです」

「… そうだな。だが有里、もし名字がタルタロスにいない、もしくは私たちの捜索出来ない範囲にいなかったらどうするつもりだ?」

「……それは…」

美鶴からの真っ当な意見に思わず押し黙る湊。よく考えれば名無しさんが他の事件に巻き込まれた可能性もある。

けれどそれ以上に確信していた。きっと名字さんはタルタロスに迷い込んでいるんだろうと。

「四の五の考えている暇はない、か。タルタロス探索は私達には必要不可欠だしな」

「だがどうやって名無しさんを探す気だ?闇雲に探索したって見つからないかもしれないんだぞ」

もっともな意見に湊は一度息を吐き出し、真っ直ぐ二人を見つめ呟いた。

「… 山岸を助けた時のように、タルタロスに変わる前に学校に忍び込む」

「なっ!?」

「有里、冷静になれ。あの時のように上手くいく かもわからないんだぞ?」

「…なんとなくわかるんです、名字さんの居場所」

「…何?」

小さく呟かれた言葉に二人は眉を顰めるが、構わず湊は続ける。

「だから僕は、止められてでも行きます」

「しかし…!」

「センパイ、今はコイツを信じてやってくれないっスか?」

「私からもお願いします」

今まで傍観していたゆかりと順平 がゆっくりと頭を下げるのを見 て、美鶴は小さく溜め息を吐い た。

「…仕方ない。だが鍵はどうするつもりだ」

「今回もバッチリ仕込んであるんで問題ないっスよ!」

「あとは夜になるのを待つだけか」

「待ってて、名無しさん…!」

タルタロスが現れるまで、あと四時間。

(必ず助け出す…!)

ぐ、と拳を握り締め探索の為の準備に取りかかる湊は心の中で呟いた。



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