鉛色の心に

□Case#8
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目覚めた、と一報が入った



『へし切長谷部、目覚めたって本当!?』

「…音羽」

その一報が入り、音羽はへし切長谷部のいた部屋に向かったが中には入れず、部屋の入口には山姥切長義がいた
どうやら監査官長に駆り出されているようだ

『長義…へし切長谷部は?』

「中で今、監査官長が尋問中だ」

『へし切長谷部はもう起きて大丈夫なの?』

音羽と大典太光世はあの後、一度部署へ戻り報告を終えてから自室で休憩をとらせてもらっており、その後のことは分からないでいた

「さぁ…たまたま見張りが平野君だったから目覚めて直ぐに監査官長を呼んだようで、状態は俺もよく分からない。でも普通に聴取出来てるみたいだし、一般的な回復はしているんじゃないかな」

『そう…審神者は?』

「まだ。でも他の部署からの情報も入ってきているみたいだしそろそろ潮時だろうけど」



「音羽」



『!か、監査官長……』

これからどうしようか悩んでいたとき、部屋から音羽たちの上官でもある監査官長が出てきた

「中に入れ。長義は宗近を呼んで来てくれ。それが終わったら自分の部署へ戻ってくれ」

「はい」

山姥切長義は素直に返事をして廊下を歩いて行ってしまい、それを見送った音羽は監査官長の後に続き、部屋に入った

『!』

部屋の真ん中にいるへし切長谷部はまだ布団に横になった状態だった

「大方の説明は終えた。へし切長谷部は審神者を捕えるために協力をしてもらう」

『!』

淡々と話される内容に音羽は目を丸めた

『本当に協力を…?』

「ここまで大事になってしまったんでな。残った刀剣男士が責務を負うのは当然だ」

『へし切長谷部…はそれでいいの…?』

音羽は寝ているへし切長谷部に視線をやった
まだ頭や顔には包帯やガーゼが残っており、痛々しい

「あの本丸で残ったのが俺と…加州清光しかいないのなら残った者が後始末をつけるのは当然だ。他の者の無念を晴らしたい」

そう話す声は低く冷たいものだった

「…ということだ。まぁ…体力が戻るまではへし切長谷部から本丸の情報をこと細かく一言一句漏らさず聞き出し記載すること。後で平野も寄越す」

『はい。あの、治療は…』

「外傷は放っておいても治る」

要するにこれ以上は特にするな、ということなのだろう

「お前の治癒の腕のお陰か骨折も内部の損傷も治っていた」

「!貴女が治してくれたのか」

監査官長の言葉にへし切長谷部が反応した

『わたし…と大典太光世の二人で、です』

「ありがとうございました」

『いいえ…』

音羽は複雑な気持ちでへし切長谷部の感謝の言葉を受け取った
へし切長谷部の意志を組まずに治し、こちらの都合で後始末に参加させることにどうも納得していなかったからだ

「……………とにかく俺は上に報告して来る。平野が来たら直ぐに聴取を始めろ」

『了解しました』



こうして一歩を踏み出すことになったのだった



〜END〜



(正しい一歩でありますように)
(※ちなみに大包平は手入れ部屋です)
 

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