鉛色の心に

□Case#9
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「大丈夫ですか?」



『平野…』

へし切長谷部の聴取を終えた音羽は執務室に戻り、聴取内容をまとめていた

「顔色が良くないですね」

『それは平野も一緒じゃない』

平野藤四郎はここでも古参の刀剣男士で何度も酷い状態の本丸の聴取をしてきた
そんな平野藤四郎ですら顔色が悪くなるほどの内容だったということだ

「久しぶりに結構酷い内容でしたもんね」

『うん…わたしもここ戻って久しぶりに聴取係やったけど、久しぶりのやつがこの内容だとね…』

音羽のまとめていた聴取内容に目を向ける

「あの、音羽さんはこの時間遡行軍の件…どう思いますか…?」

平野藤四郎は音羽がまとめている内容の一番気になるところに目を向けた

『審神者を捕まえて聞かないと分かんないけど、たぶん何か結界とか呪具とか使って閉じ込めていたんじゃないかな』

時間遡行軍をあの地下に閉じ込めていた方法は確かに気になることだった

「へし切長谷部さんの話を聞いていると、閉じ込めていた時間遡行軍は中々死ななかったって言ってましたね」

『それも気になるよね。もしかしたらあそこに閉じ込めておく前に時間遡行軍になんらかの呪いみたいのをかけたのかもしれない。もしくはあの地下室自体にそういうものがかかっていた、とか』

冷静に分析する音羽を平野藤四郎はじっと見る

「それも調べに行かれるのですか?」

『そもそも時間遡行軍を捕まえて自分の時代に連れてくるっていうことが何でできたのかも気になるし…それも含めて調べることも仕事ですから』

音羽はそれが当たり前のように言い、資料をまとめた

『よし、これで大丈夫かな』

「監査官長には僕がまとめたものを持って行きますので、音羽さんは休んでくださいね」

平野藤四郎は音羽の手から資料を取った

『ありがとう。平野も休むんだよ』

「ありがとうございます」

平野藤四郎は音羽に礼を言い部屋を後にした
それを見送った音羽は自分でまとめた資料を見直す
明らかに今回の案件は異様だ
今までも何度も様々な本丸を覗いてきた
レアリティの高い刀剣男士を求める者
とある刀工の生み出した刀にのみ執着する者や短刀にのみ固執し集める者
その妙な執着心が歪みを生み、酷い状態の本丸になってしまい、それらを強制的に排除するのが音羽たちの部署の仕事だ
何度も酷い有り様の本丸と審神者、そして刀剣男士を見てきたが今回のはまた違う異様さを漂わせている

『…いやだな、なんか』



その呟きは誰もいない部屋に吸い込まれていった



〜END〜



(まだ終わりそうにない)
 

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