座敷わらしと愉快な仲間たち。
□誰でも、何よりも
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倒れた伊作に手を差し出す。
「粋はやっぱ強いなぁ」
『伊作も、この間より蹴りの威力が増してた』
今は忍たま、くのたま5・6年合同の実習中。
「え!?本当?留さんに鍛錬付き合ってもらったかいがあったなぁ」
周りでは、男女問わず組手をしている。忍たま、くのたま合同ということでここぞとばかりに異性と手合わせする輩もいれば、なんとなく遠慮しているのか同性と組手をしている人も多い。
『5年とでもやってこようかな』
「僕もいろんな人とやってみるよ。じゃあね、ありがと粋」
『ばいばい』
伊作と別れて辺りを見回すと、私と同じようにキョロキョロと次の相手を探す人が数人。
その中に、あの子もいた。
『(富士瀬楓....)』
なんとなく気になって、そちらの方へ歩いていく。トコトコと、だんだん近付く距離。あァ、くのたまには興味がないみたいだ。
富士瀬楓の背後に立つ。なんとなく気配を消して。
『富士瀬、くん』
「っ!?粋、先輩ですか....驚かせないでくださいよ」
『あはは、ごめん。私と組手、してくれる?』
へらり、と笑って聞いてみる。
富士瀬楓の目は少し困ったような色を灯した。
「....あの、俺くのたまとはちょっと」
『どうして?恥ずかしいの?』
「いや....女の人を蹴ったり殴ったりするのは....」
『私は、いいよ?』
「でも、女はか弱いから」
なんとなく、悲しい色を瞳に色付けながらそう言い切ると、富士瀬楓は別の忍たまへ話しかけていった。私はひとり、立ち尽くす。
なんとなく動けなかった。
「粋先輩?」
『....三郎?』
「はい、どうしたんです?こんなところで1人」
話しかけてきたのは、雷蔵に変装した鉢屋三郎。
私が1人立ち尽くしているのを見てやってきたらしい。
私はへらりと笑う。
『組手の相手が見つからなくって』
「それなら、私とやりませんか?私も探していたんです」
『....手加減は不要』
三郎はニヤリと口を歪ませ、
「もちろん」
私もニコリと笑う
私は三郎を蹴り飛ばした。
あァ、男と女なんて、関係ないのに。
誰でも、何よりも強くなれるのに。
(粋先輩....三郎を蹴り飛ばしたぞ....)
(なはははッ!!粋の蹴りはいつ見ても鋭いな!!!)
。