霊感事務員
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花が咲き乱れる適度な温かさの頃に、忍術学園の六年生の空気は、少しの緊張感と焦りを生じていた。
それは、卒業後自分がどのように進むのか、また、進みたい道へ進めるのか。
まだ、それすらもわからない者もいる。
『なぁ、みのり。お前、卒業したあとどうするのか決まってるの?』
「…俺は、フリーの忍になるよ。医者の仕事もしたいし」
『ほぉー…決まってんのなー』
「…璃粋、お前もそろそろ決めないとダメだろう」
呆れたような顔をして俺を見るみのり。しょーがないさ、何も考えてないし、特にやりたいと言う職もない。まぁ、忍になるためにこの学園にいるんだけど。
『んー…特にやりたいこともねぇなぁ…』
「お前、動物に芸仕込むの得意だろ。旅芸人にでもなれば?」
『それは嫌だな、みのりん』
「黙れ」
ヒュッ、と苦無が飛んでくる。
それをサッと避け壁に刺さる苦無を見た。怖い怖い。
苦無を抜き、みのりに向かって軽く投げると鉄扇で叩き落としていた。
「…先生に相談してみれば?」
『仕事くださいって?城には就きたくねぇな』
「個人探せよ」
と、そんなこんなでみのりと意見していると、ボフンッ!という音と一緒に視界が白くなっていく。あぁ、これは学園長のお出ましか。今度はなんのお使いをたのまれるのやら。
「げっほげっほっ、ゴホッ」
「自分で煙玉投げてむせるなよ…」
『ははっ、いつものことじゃねぇか。学園長、何のご用事で?』
未だにむせている老人に、温めたお茶を出すと奪うように引っ掴み一気に飲み干す。
元気なじいさんだ。
「伊佐嵳 璃粋!」
『はい?』
「お主、まだ卒業後のことはきまっておらぬのだな?」
『えぇ、まだなにも』
驚いた、話を聞いていたのか。と驚愕していれば学園長はしめた、というような顔で俺を見る。え、なんなの。
「お主、わしに雇われてはみないか?」
「『は?』」
みのりとハモった。
。
はじまりがこんな急展開でよかったのかしら。