霊感事務員
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※若干会話文だけになるところあります
生徒長屋から少し離れた庵の、障子の前に立つ。中には一人と一匹の気配。あ、そういや今夕食時だ。まぁ、いいや。
『...夕食時に失礼、学園長先生、少しよろしいでしょうか』
「璃粋か。入りなさい」
すっ、と障子を開けると、夕食はどうやら済ませたらしい。ヘムヘムとお茶を啜りながら将棋を打っていた。
あァ、ヘムヘムが劣勢か。まだ方法はあるぞ。
『学園長、この間の俺を雇うと言う話、詳しく伺いに来ました。学園長は、何故俺を選んで雇うなどと仰ったのでしょうか?』
パチ、とヘムヘムが難しそうな顔で駒を打つ。
「まぁ、座りなさい。ヘムヘムお茶をもう一つ出しなさい」
『ありがとうございます』
ヘムヘムが茶を入れている間に、将棋盤を間に学園長と向き合う。ヘムヘムは相当追い込まれているらしい。
「して、璃粋。お前はどうして自分を雇うと言ったのかを聞きに来たな」
パチ
『はい、俺より優れたやつは何人もいるはず。学園の生徒以外にも』
「そうじゃな。お前より優れたやつは他にもいるじゃろう」
『それなら、なぜ?』
パチ
「...璃粋よ、お前はこの学園のために身を呈することは、できるか?」
『はい、学園を守るためなら、騙しも、裏切りも、堕としも、拷問も、隠密も、殺しも、なんでも致しましょう』
パチ
「...そうじゃろう、お主は、学園のため、学園を守るためなら、なんでもする」
....パチ
『それに、俺には返さなくてはならない恩もある』
「...璃粋、」
パチ
『仇は、とった。あとは、恩を返す』
「....恩は、無理に返すものではないぞ」
『無理に返そうとは思ってませんよ、王手です』
「なッ....!!も、もう一回!!!」
『嫌ですよ、風呂入りたいですし。....俺を雇うという話、是非、承せていただきたい』
「...よいのか?お主は、この学園でも稀に見ぬ優秀な奴じゃ。きっと、ひっぱりだこじゃろう」
『言い出したのは学園長ですよ、きっと、学園長にとってなにか役立てるのでしょう?俺は』
「...ありがとうな、璃粋」
そういった老人は、学園長でもなんでもない、ただの老人に見えた。
『...貴方に、忠誠を誓いましょう。主』
老人の足元に立て膝をつき、頭を下げる。
「...まだ、お主は生徒じゃ。よく学び、よく感じなさい」
頭をあげた時には、ありがとう、と言ったときのただの老人は消え、いつもの学園長に戻っていた。
。
話が脱線していったのにお気づきだろうか。