蒼風と紅
□第一話
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東の海 ゲヴェクス島
花の街「ブルーメ」
・・・
「くそっ!どこ行きやがった!!」
「森の中まで探せっ!」
いつもは観光客の賑わう声であふれている街も、武器を持った者達が走り回り、住民の姿は何処にもなかった。
「・・・しつこいなぁ・・・」
賞金稼ぎの集団が走り回る森の中、木の上に悠然と座る一つの影。
ローブを深く被っているため顔は見えず、中性的な声のため性別もわからない。
「船も壊されちゃったし・・・」
「おいっ!いたぞ、あそこだ!!」
賞金稼ぎの一人が木の上を指差す。
「観念しろ! “水魔 -ウンディーネ- ” アクウィラ・シーナ!!」
“水魔 -ウンディーネ- ”アクウィラ・シーナ
賞金額 4億ベリー
「そう簡単に捕まるか・・・」
地面に降り立ち男達の間を素早くすり抜けて行くシーナ。
「(仕方ない・・・
一旦森から出るか・・・)」
森の中を走り抜け、森から出ようとした瞬間、
「・・・!」
ガッ!
突然の攻撃を避けるシーナ。
「・・・なかなか、骨の有りそうなのが来たな・・・」
現れたのは1mほどの棍を持った40代くらいの男。
「キミが“水魔 -ウンディーネ- ”か
聞いた通りの実力だ・・・」
男は4億の賞金首を前にしても動じていない。
「・・・自信がありそうだが、
たかが東の海の賞金稼ぎがオレを捕まえられるとでも?」
「さて?どうかなっ!」
男は言葉とともに攻撃を仕掛けてくる。
シーナは男の攻撃をいとも簡単に避けていく。
「・・・キリがないな・・・」
男の棍を手で受け止め攻撃しようとするが、
ガクッ、
「・・・っ!(海楼石!)」
力が抜けていく感覚に一瞬の隙ができる。
「もらったっ!」
男はいつの間にかナイフを手にしており、シーナに振りかぶる。
「っ・・・」
二の腕にナイフが擦る。
「っ・・・『蒼の矢 -ダーツ・ブラオ- 』」
棍から手を離し、シーナがそう言った瞬間男に水の刃が襲いかかる。
「グアッ!」
ダッ!
その隙にシーナは森を抜け、海岸まで走る。
「チッ・・・ん?」
シーナが去ったあとに深い蒼の宝石が埋められたネックレスが落ちていた。
「なかなかの上物じゃねぇか・・・」
男はニヤリと笑い自分の首にかけると、その場から去っていった。
・・・
「ハァ・・・ハァ・・・」
海岸の大岩の陰に隠れ座り込むシーナ。
その腕からは血が流れている。
「・・・っ(毒が塗ってあったか・・・)」
体が痺れるような感覚に瞼が重くなっていく。
「(ヤバイな・・・意識が・・・)」
シーナの意識は沈んでいった。
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